「オッ!プラダのバッグ!4000円!安い!絶対買う!!」 突然、娘が叫びました。
Yahooオークションを見ているようです。
見れば締切時間まであと1時間。現在の入札者6人。自動延長なし。
これからが勝負です。
ここでYAHOOオークションについてあまりなじみがない人に少々説明いたします。
YAHOOオークションというのは、いわばインターネット上のフリーマーケットで、その規模の大きさは
およそ無い物が無い、というぐらいのもので品数、実に数万点,一日に動く金額が数億とか数十億とか、とにかくとてつもなく大きなフリーマーケットで
見に来る人も膨大な人数で、この集客力を目当てにここで商売をしているセミプロ,またはプロの商売人も居るぐらいです。・・・・おかげで最近は掘り出し物を見つけるという
フリーマーケットの本来の醍醐味が失われつつありますが、とにかく日本最大のフリーマーケットです。
さて、娘が目をつけたプラダのバッグに話しは戻ります。
自動延長なしというのは、締め切り時間までの間の最後の入札者が落札するというものです。
ちなみに自動延長なしと書かれていないものは締切時間5分前に誰かが入札すると自動的に締切時間があと10分延長されます。
例えば締め切り前5分前にAさんが入札して,次の締め切り前にBさんが入札、次の締め切り前にCさんが入札、という具合に
なるとそのオークションは延々と続きます。値段もどこまで行くか分からないし終わりの時間も分かりません。
その点自動延長なしの場合は時間切れぎりぎりに入れた値段で落札できます。
当然時間切れ数分前になると人気商品は競り合いになり値段が数秒単位でUPしていきます。
これが面白いのです
ほんの数秒遅れで落札を逃がしたり,数秒差で落札できたりそのスリルが面白いのです。
さて、いよいよ締め切り20分前になりました。
入札者も12人まで増えています。値段も8200円になっています。
娘も真剣な眼差しでパソコンの前に座っています。
僕「どうやー?」・・・ビールを飲みながら。
娘「そろそろ入札しょーか?」
僕「まだ、ちょっと早いん違う?終了まで20分やろ?今入れても誰か他のやつが入れよるで。」
娘「そーやなー。もうちょっと待とか。」
娘は1分おきにパソコンの画面を再読み込みで更新しています。
娘「アッ! また誰か入札したわ!」
「アッ!またや!」
「アッ!またや!」
画面を見ると締め切りまで後5分、どんどん入札者が増えている。値段も1万4千円になっている。
娘「よし!入札や!」
娘がいよいよ戦闘開始をしだした。
1万5千円、と入札
残念ながらそれより高い金額で他の方が入札されていますと画面に出た。
娘「ウワッ!あかんわ!」
娘は慌てて、1万7千円、と入れなおす。
残念ながらそれより高い金額で他の方が入札されていますまたもや同じ文面が画面に現われた。
娘は少々怒った顔をして、今度は2万円と入れなおす。
残念ながらそれより高い金額で他の方が入札されています。 非情にもまた同じ文面が。
僕「もう・・・やめたら・・・・あきらめ。・・・」
娘「アカン!これ欲しいねん!2万円でもまだ安いねんで!」
僕はブランド物に関してはほとんど無知なのでこんな小さなバッグが2万円でも安いなんて到底信じられなかったが娘はいまや目は血走り
髪の毛は逆立ち鼻の穴は3倍に広がったであろうぐらいに鼻息を荒くして画面を凝視している。
入力-2万2千円。
あなたが現在の最高入札者です。
娘「やった!」
僕「あと終わりまで何分あるの?」
娘「3分や」
僕「まだ分からんなー。最後の最後で誰かが入れよるかもしれんで。」
娘「そんなん、アカン!絶対これ落札するねん。」といって即座に画面をリロードする。
娘「あっ!やられた! 誰か入れよった!」
画面を見ると値段は2万3千円になっている。締め切りまであと2分。
こうなったら次は最後の勝負である。
終了ぎりぎり数秒前で入札してしまう。そうすれば自動延長なしだからスベリコミセーフで落札できる。
そう作戦を組み立てた娘はぎりぎりまで待つ作戦にでた。
終了まで50秒、・・・・40秒・・・・・・30秒。
「よし!今や!」
娘は勝利を確信したかのように笑みを浮かべて入札金額を入れた。
2万5000円。
やった!あとは入札ボタンを押せば確実にプラダのバッグは落札できる!
もう他の人は入札する時間的余裕は無いだろう。
勝利への引き金、幸せへのトビラの鍵を回すかのように娘は陶然と入札ボタンを押した。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?????????????????
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画面が変わらない。
マウスが動かない!!
フリーズした!!!
フリーズした!!!
フリーズした!!!
娘は目が点である。
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娘の顔から憑き物が取れたように逆立った毛は元に戻り、血走った目は虚ろな目になり、3倍は開いた鼻の穴は元の可愛い鼻の穴に収縮した。
娘「アーアー!なんでこんな時に !」
僕「しゃーないやろ。もうあきらめ。」
コンピュータを再起動し再びYahooオークションにつないで見る。プラダのバッグはすでに入札時間を終了していた。
落札金額2万3千円。
フリーズさえしなかったら落札できていたものを・・・・・・・・・・・・。
娘はあきらめきれないようで別の掘り出し物を探し出した。
でも僕は内心ホッとしています。なぜなら、娘が2万3千円のお金を持っていないのは容易に想像できたからです。
どうせ、落札できたときには僕に「ナー♪パパー♪・・・・・・・・・・一生のお願い!」と泣きついてくるに決まっているのだから。
いつものことです。
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