久々のエッセーです。
しばらく忙しくて、更新ままならず、内心、気にはなっておりましたが、そのままになっておりました。
今日はちょっと真面目な話。
皆さんご承知のように繊維業界は今、不況のまっただ中です。
大阪は繊維の町で、繊維関係の会社がたくさんあるのですが、毎月のように、
あの会社がつぶれた。この会社がつぶれた。の話を聞きます。
私の仕事も繊維に染めるプリントデザインを描くことです。
景気のいい話などあるはずがありません。
せめて、このページで憂さを晴らす程度です。
しかし、どうしても我慢できない話があるので今日はそれを書きます。
私たちの業界でも不況の波が押し寄せ、大阪に山ほどあるデザインスタジオは皆、仕事の取り合いです。
どのようにして、仕事をとるか?
値引き合戦です。
それは恐ろしいほどの値引き合戦です。
私の得意先の一社も図案代を下げてくれと言ってきました。
私の場合は幸い、その一社だけですが、中には得意先軒並みにそれを言われた人もいます。
断ればよいのですが、デザインスタジオは今仕事の取り合いです。
繊維企業には毎日、毎日、売り込みにくるデザインスタジオがいくらでもいます。
彼らは仕事をとるが為、とんでもない値段で仕事を引き受けます。断れば彼らに取って代わられるおそれがあります。
いかに今の仕事がコンピュータによって、効率化が計られたとはいえ、それはとんでもない値段です。
何十年前のデザイン料よりも遙かに安い値段なのです。
これが、どういった結果を引き起こすか?
考えてみてください。
一枚のデザインの値段が何分の一かになった場合、皆さんならどうしますか?
毎月の必要経費は今までと変わりなく必要なのです。
僕なら、デザインにかける時間を短縮して、数で稼ぐことを考えます。
現に値下げを言われたデザイナーたちは皆、そういう方向に進んでいます。
これが、どういった結果を招くか?
デザインのレベルの低下です。
今日、中国、韓国等のアジアにもデザインスタジオはできています。
彼らは、一枚、数千円でデザインを描いているそうです。(これでも、彼らの国ではとんでもなく高い値段です。一ヶ月の給料が数千円という国ですから)
しかも、日増しに着実に、デザイン力を身につけてきております。
僕たち日本のデザイナーが彼らに対抗しうるのはデザインのレベルの違いでした。
それを崩していってどうするの?
値引き合戦で仕事をとるデザイナーたちは自分で自分の首を絞めていることに気がつかないのでしょうか?
今、腹がいっぱいになれば良いのでしょうか?
これはデザイナーたちだけの責任ではもちろんありません。
企業の体質にも問題があります。
確かに今、繊維業界は厳しい状況です。精一杯の努力で経費削減をして、アジア諸国の企業との競争力を
維持する姿勢は大事でしょう。
しかし、生命線の品質を低下させる結果を招くやり方には疑問を感じます。
企業もデザイナーも目先のことしか考えず、とりあえず、今を乗り切れればよい。先のことを考えてる余裕はない。
ということなのでしょうが、本当にそれで良いのでしょうか?
たぶん、どう頑張っても、総合的な値段の競争力ではアジア諸国には日本は負けます。
同じ土俵では勝負はできないと思います。
それなら、どうやって、勝負するか?
それは、品質の良さ、デザイン力の良さ、製品の良さ、で勝負すべきなのです。
コストダウン出来るところはする。しかし、してはならないところもあるのです。
もちろん、企業の中にもポリシーをちゃんと持って、やっておられる企業もあります。
製品自体はアジアで生産するが、生命線のデザインは、十分に予算をかけて、やっておられる企業もあります。
その企業は、そして、順調に業績を伸ばしております。
どうか、日本の繊維企業、そして、繊維デザインに関わる人たちすべてにお願いしたい。
自分で自分の首を絞めるまねはやめましょう。
どうすれば目先じゃなく十年先、二十年先、生き残っていけるか、考えてください。
これを読まれたデザイナーの人たちはどう思われますか?是非、ご意見を伺いたいです。
これで確実にこのページは得意先には内緒だろうなー ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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