僕の事務所は大阪の本町というところの小さなビルの中にあります。
一階にお店屋さんが、二階に内科医院がそして三階が事務所になっています。
各階段の踊り場にトイレがあります。
時々、二階の内科医院の患者さんが検尿のコップを持ってトイレを行き来しているのに出くわしますが
自分のオシッコを持ってウロウロするのは誰でもあまり人には見られたくない姿であるのか
皆、少々、うつむき加減に照れくさそうにコップを持ってトイレから出て来ます。
マー、これは、至極当然のことでしょう。自分の検尿のコップを誇らしげに、見せびらかすかのように持ち運びしている人がいたら、
その人は8割以上の確立でアブノーマルな人です。気をつけましょう。
特に、相手が若い女の人のときなど、こちらも一瞬、ハッ!とするのですが、まさか、オシッコの入ったコップを覗き込むわけにも行かず、
さらとて、顔を覗き込むわけにもいかず目のやり場に困ってしまいます。
あそこのトイレで検尿はしたくないなー、と常日頃から思っていましたが
五日ほど前から腹痛が治まりません。 原因不明で不安に感じていましたら発熱までしてきました。
さすがに少々、不安になり、(というのも僕の家系は腸が弱い家系らしく、大腸ガンで死んだ人がかなりいます。僕の親父もそうでした)
医者に行くことにしました。
もちろん、事務所から近いほうが何かと便利なので、二階の内科医院に行きました。
僕「すみません・・・・、四、五日前からお腹が痛いのですが・・・・」
看護婦さん「わかりました。それでは、このコップにオシッコを取ってきてください。検尿をします(キッパリ)。」
僕は、(エッ!検尿!・・・と、いうことは、このコップを持って、あのトイレまで行き来しなくてはならないのか!弱ったな、
三階には僕の事務所があるし、その中には同業の仲間もいます。アイツらに会わないかなー?
もし、出くわせば、口が悪いアイツらのことです。小学生のとき学校のトイレでウンコをしていた友達を「ウンコ男!ウンコ男!」
とからかったと、同じように僕のことを「検尿男!検尿男!」と、からかいかねません。・・・見られたくないなー・・・・)
と、内心では思いましたが、そういった事情をこの看護婦さんに涙ながらに訴えても恐らく聞き入れてもらえないだろうし、
しかたがなく意を決し、爽やかな笑顔をうかべ、(検尿なんて恥ずかしくないぞ!俺は検尿は慣れているんだぞ、
俺は検尿に関してはプロなんだぞ、といったもろもろのメッセージを含んだ笑顔)
「はい!わかりました!」
と、コップを持ってトイレに向かいました。
幸い、同僚に出くわすことも無く、若くて、可憐な女性に出くわすことも無く検尿を済ませることが出来ました。(第一ステージ、クリア!)
さて、腹痛の原因ですが、大腸憩室炎(ダイチョウ ケイシツエン)の疑いあり、ということらしく、
要は、そんなにたいしたことは無く、ホットケバなおる、種類のものであるらしく
お医者さんも「マー、とりあえず、この薬でも飲んどいてください。それでも治らなければ、次回はレントゲンを撮りましょう。」との、ことでした。
ホッ、としていると
「しかし、一応、便も見たいので次回持ってきてください。それから三日あけて、もう一度便を持ってきてください、そのとき検尿ももう一度します」
と、第2ステージ、さらには第3ステージの開始を告げるかのような言葉です。ガックリシテ事務所に戻りましたが
その日だけでも、階段で看護婦さんに二回も出くわしました。
(アー、この看護婦さんに、僕のオシッコを見られたのか!)と、思うと自分の恥部を見られたかのような恥ずかしさにみまわれます。
そのうえ、今度はウンコまで見られるのか!そして、毎日毎日、これから階段で看護婦さんに出くわすたびに
(この人に、僕のオシッコを見られ、そのうえ、ウンコまで見られたのか・・・・・アー、恥ずかしい!)と、思い、
僕がいくら、がんばっておしゃれをして歩いていても
(ウフフ、今日はおしゃれをしているわね、でも、私はあなたのすべてを知っているのよ。 なにしろ、オシッコどころかあなたのウンチまで見ちゃったんですからね)
と、思われるのじゃないかと思うと、気もそぞろになり、(事務所、引っ越そうかなー?)などと考えたりもします。
マ、そんなことをいちいち思う看護婦さんはいないでしょうけどね。
今回のことでひとつ、教訓を得ました。それは、
泌尿器科と肛門科は出来るだけ、知り合いのいない、遠いところの病院に行こう!
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