親友M君の話
今日は僕の親友M君の話をしましょう。
彼と僕とは30年近い付き合いになります。
彼は、昔からギャンブルが大好きで、なんと、小学校2年ぐらいのときから、家族でマージャンをやっていたそうです。
そして、彼には天性の才能があるのか、めきめきマージャンの腕をあげ、
16歳ぐらいの時には、一人でマージャンやに行き賭けマージャンをやっていました。
そして、20歳ぐらいでは、なんと!ある店の旦那と店一軒を賭けたマージャンもしたことがあるそうです。
そして、彼は生来の度胸のよさで、その世界では一目置かれる存在になっていました。
ある時期はヤクザの親分の相談役のようなこともしていたことがあるらしいです。
競馬のノミ屋のようなこともやっていた時期があり、そのころは、たいそう羽振りがよさそうでした。
そんな、僕とは性格が正反対のような彼と僕とがどうして、30年近くも親友として付き合ってこれたのか
僕にも良くわかりません。ただ、ウマが合ったとしか言いようがありません。
実際、僕たちは妙にウマが合いました。
お互い住む世界はぜんぜん違って共通の話題などないのですが、彼と飲む酒は楽しく、愉快なのです。
彼は、そんな風に普通のまじめな人から見るとヤクザと間違えられるような人間でしたが妙に恥ずかしがりやのところがありまして、
素人の(彼の言い方をそのままにいいます)女性と付き合ったことがなかったのです。
イヤ、彼がもてないということではないんですよ。
むしろ、彼は、その筋の女性方には、非常にもてて、いつもケバイ・・・失礼、美しい女性をつれて歩いていましたから。
ただ、普通の女性の前に出ると、(普通の女性とは彼の場合、ヤクザの女でない、覚せい剤をやったりしている女ではない、
売春をやったりしている女でない、というような意味です。)
緊張して、言葉が出てこず、何を言ってるのか自分でもシドロモドロになるそうです。
そんな彼が、ある日、お見合いをしました。
あいては、もちろん普通の女性です。
最初は両家の両親をまじえ、食事などしていたそうですが、
そこは、お見合いの決り文句。「ここらで、若いもん二人にまかせて・・・・」
という具合になり、二人っきりのデートに出かけたそうです。
さー、彼は困りました。
今までは両親がいたりして、別に自分がしゃべらなくても場はもちましたが、今からは、そういうわけには行きません。
たぶん、そのときの彼の表情は、親ライオンに崖に突き落とされた子ライオンでも、そんなに不安そうな顔はすまい、というぐらいの
情けない表情をしていたことでしょう。
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万事休す!になった彼は、どうしたか?
「・・・・・・あんな、・・・・・・・おれな・・・・・こんなにんげんやろ・・・・・・
いんしょうわるいやろ?・・・・・・・・そのとおりやねん。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ほんでな・・・・・・・・・・・・・ほんまのおれを見といてほしいんや・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そういって彼は、いきつけの飲み屋に彼女を連れて行きました。
そして、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
つれまわすこと数軒。
時刻はいつのまにか朝の3時になっていました。
「これがホンマノ俺やねん」
もちろん、相手の親はカンカンです。即座に断りの返事がきたそうです。
が、
彼いわく、
「・・・・・・・・・・さやけど、けっこう楽しそうにやっとったぞ。・・・・・・・」
どうです?皆さん。僕が彼と30年近くも付き合ってこれた理由がすこしは分かっていただけましたか?
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