三声のインヴェンション(シンフォニア)について

シンフォニアという題名はバッハ自身がつけたものですが、
多声部の器楽曲といった意味の他には形式的な意味は無いようです。
二声のインヴェンションと違い、さらに一声部増えることになります。
たった一声部あるかないかの違いではありますが、いざ演奏してみると、
格段の困難さがあります。
ふたつの声部を片手で演奏したり、真ん中の声部を右手と左手の
共同作業によって演奏しなくてはならないことが起こります。
このことから、各指の音楽的な独立性が非常に要求されてくるわけです。

No.9 ヘ短調について

昔、作曲を始めた頃「いつかこんな曲を作りたい」と、いつも思っていました。
この曲は大変暗いイメージなのですが、バッハの音楽の特徴がとてもよく
出ています。
テーマはラメントバス(悲しみのバス)と呼ばれるもので、この上に
「嘆息のテーマ」と呼ばれている対主題が現れます。
そしてこの「嘆息のテーマ」の変型と考えられるもうひとつの対主題が
さらに絡んでくるという三重対位法で作られています。
「ラメントバス」と「嘆息のテーマ」はバッハのカンタータや受難曲などで
よく使われバッハの音楽の大きな特色になっています。


inventio
(第1曲三連音符を主にした自筆譜)

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