「ジミヘンドリックスがギターでやろうとした事を声で表現しようとしている」
 かつて我が師ロバートフリップにこう言わしめた男ピータ−ハミル。
僕がこの人の「唄」を初めて聴いたのは彼の長い活動暦から見たらほんの最近で
1996年、久々の国内盤"X MY HEART"が出た頃だった。
以前から名前こそ知ってはいたものの聴く機会に恵まれず気になってはいたがそのままだった。
ところが今度フリップの主催するDGM経由で新作がリリースされると云う。
当時まだSSEとの絡みがあった頃で、僕の新作の打ち合わせの為に(結果それはリリースされていない)
北村氏の家に行った時に何かお勧めを聴かせてくれ、と言ったのが始まりだった。
彼は散々迷った挙句一枚を選ぶ。
聴かせてくれたのは
"THE SILENT CORNER AND THE EMPTY STAGE (1974)"
だった。
まず声に耳がいった。なんて特徴的な声だろうと。
そしてすぐ唄の表現力の高さに驚かされた。
何なんだ?このヴォーカリストは?
楽曲も良かった。最後の"A Louse is not a Home"が流れる時には既に完全に魅了されていた。
その日の帰り、近所のCD屋で早速CDを探した。
残念ながら"THE SILENT〜"は無かったが幸い数枚あったのでその中から
"AND CLOSE AS THIS"を選んだ。
中でも特にバラードが素晴らしいと感じていたが、正直どれを買って良いか解らなかったので、
ジャケットにピアノの写真が載ってるこれを選んだ。
ピアノの弾き語りアルバムだった。一曲目
"Too many of my yesterday"
から全てが素晴らしかった。
次の日新宿で"THE SILENT〜"は無事入手出来た。
それから次に北村氏に会うまでの1-2週間の内に、僕は近所にあった物5-6枚を手に入れていた。

あれから5年、僕は片っ端からCDやブートビデオ等を買い漁り、
好きなアーティストの中でロバートフリップと肩を並べる程想い入れは深くなっていた。
自分の作る楽曲や歌唱法にも少なからず影響は出始めていた。
そしてある思いが自分の中でどんどん大きくなっていた。
生でこの唄を聴いてみたい
過去に2度来日していた事は知っていたが、その時何故観に行かなかったかと心底悔やんだ。
それでもかつてはまだ日本でも知名度もそこそこあり、アルバムもリリースされていたが、
今現在となってはアルバムは"X MY HEART"以降現在まで
ライヴ盤も含め8枚程リリースされているのだが音沙汰無し。
(VIVID及びディスクユニオンから輸入盤に帯、解説をつけた形の物は出ている)
知名度等無いに等しくCDを買うにもプログレを扱う所か大手以外ではほぼ入手不可能と云う状態で、
恐らく2度と来日する事は無いだろうと殆ど諦めていた。
ところが2000年も終わりに近づいたある日、格爆級のニュースが入る。
2001年3月ピーターハミル再々来日決定!!!!
自分の目を疑った。
一度目を閉じ、ゆっくりともう一度、恐る恐るモニタに目をやる。
間違いじゃない、僕は歓喜した。
すぐ美澄に連絡をした。すると驚いた事にその後すぐにチケットの予約をしたと連絡が入った。
僕の気付かぬ内に彼女もすっかりハミルの魅力に取り憑かれていたのだ。

それから3月までは周辺がごたごたしてた事もありあっという間だった。
そして、遂にその日はやってきた。

2001年3月9日
前日は興奮と花粉で寝れなかった。
今回はヴァイオリン奏者のスチュワートゴードンとのデュオらしい。

出発前に二時間程仮眠をとってお台場に向かった。
思わず顔がにやける。そして何故か会場に近づくにつれ緊張の度合いが増す自分に気付く。
会場まではどうにか迷わず辿り着く事が出来たが、
オープンの時間を勘違いしており会場に着いた時にはもう客入れは始まっていた。
やばいかな?と思ったが案内された席(ブロック毎に分かれた自由席)は
前から2つ目のテーブル、スチュワートゴードン側(向かって右手)で、
ピアノを弾いてるハミルを真正面から観る事が出来る絶好の位置だった。
会場である"TRIBUTE TO THE LOVE GENERATION"は
MEDIAGEと云うデカイ半デパート、半アミューズメントスポットみたいな所の6Fにあり、
隣には「イエローサブマリンアドヴェンチャー」なるものがあり非常に興味をひかれた。
中は結構広く、ゆったりと席の間隔を取っていて
ライヴハウスと云うよりはおしゃれなレストランと云った感じ。
キャパは300位らしいがテーブルを取っ払えば倍の600は入りそうだ。
開場から開演まで約1時間半あり、その間に食事でもしてね、と云う事らしい。
メニューを見たが高いのでウーロン茶を頼む。
途中でトイレに行きたくなったりするのが嫌なので、僕は何時もこう云う時は酒を呑まない。
席にはワールドメニューなる物が置いており、その日のお勧めや出演者の国のお酒、
そして出演者のサイン等が印刷されていて持ち帰っても良い様になっている。
ここはどのアーティストも二部形式でライヴを演るらしい。
サラリーマン風の男性二人と合い席になった。
その内の一人はここで呑める事を知らずに何処かで日本酒を呑んできた、と話していた。
7時を少し廻った頃、ステージ上のスクリーンが下りてきた。
何を見せてくれるんだろう、とわくわくしてると見た事も無い只のCMだった。
そんなこんなで7時半を少し廻った頃、ようやく客電が落ち、遂にハミルがステージに姿を現した。
本物だ、そんな思いに駆られながら、
初めて目の前で発せられた声を聴いただけで涙が止まらなくなっていた。

2001.3.9 Peter Hammill at Tribute to the Love Generation

(piano)
1. The Siren Song
(Quiet Zone/The Presure Dome 1977)VdG
2. Too Many of My Yesterday
(And Close As This 1986)
3. Nothing Comes
(Eveyone You Hold 1997)
4. Tango for One
(None of the Avobe 2000)
5. Unrehearsed
(This 1998)

(guitar)
6. Comfortable
(Patience 1982)
7. Shingle Song
(Nadir's Big Chance 1975)
8. Time for a Change
(PH7 1979)
------------
9. Sign
(Sitting Targets 1981)
10.Like Veronica
(None of the Above 2000)
11.Patient
(Patience 1982)

(piano)
12.Autumn
(Over 1977)
13.Bubble
(Everyone You Hold 1997)
14.A Way Out
(Out of Water 1990)
15.Traintime
(Patience 1982)

(encore)

(guitar)
16.Modern
(The Silent Corner and the Empty Stage 1974)

(encore 2)

(a cappella)
17.Again
(In Camera 1974)

初めは静かに、そして曲を重ねる毎に徐々にテンションが上がっていく。
僕はずっと石の様に固まっていた。
完全に圧倒されていた。
頭の少し上の部分に自分の気が集中してるのが解る。
声が身体全体に響き渡り、気が身体を突き抜けて行く。
油断すると限り無く遠い何処かへ連れて行かれたままになりそう。
だけど何処かとても優しい、そんな感じ。
限り無く心地良く、何処までも攻撃的で、突き刺さる程痛い。
自分が想像してたよりも遥かにその世界は深く、広く、大きかった。

数曲が過ぎ、幾らか冷静さを取り戻す。
長年一緒に演奏してきただけあって二人の呼吸が素晴らしい。
完全にハミルのリズムで曲は進行してるが、それに合わすのが上手い。
このスチュワートゴードンと云う人、かなり面白いプレイをする。
ヴァイオリンにエフェクターを掛け、ギターアンプで音を出してる。
その音は優しく、ノイズの様に激しく五月蝿くと自由自在に飛び出してくる。
だが決してハミルの唄の邪魔をする事は無い。
正直こんなヴァイオリンの音の使い方があったか、と心底驚いた。
この人は顔で弾く人だ、とても良い表情で弾いている。
切れた弓をぶちぶちと切る姿がカッコ良かった。

しかしハミルは特にピアノのミスタッチが多いな(笑)。
もっとも聴いてる時はそんな事殆ど気にもならないのだが。

合い席のサラリーマンが五月蝿い。
曲中に(しかもブレイクの最中に)喋ったり、一緒に歌ったりしないで欲しい。
楽しみ方は人それぞれだとは思うが俺はあんたの歌なんか聴きたくない。
ハミルの唄の邪魔をしないでくれ。

曲に目を向けてみる。
初めの2曲、特に2曲目の"Too Many of My Yesterday"は冷静になんて聴けなかった。
実は前日の夜、寝れないのを良い事に最近のライヴの選曲を調べていたりしたのだが(笑)
その中でもたまにしか演奏されておらず、演ってくれたら嬉しいけど可能性は低そうだと思っていた。
イントロのメロディが奏でられた時、又涙が溢れてきた。
初日第一部のピアノ曲ではこれと"Unrehearsed"が特に素晴らしかった様に思う。
ギターに持ち替えてからテンションは更に上がる。
"Confortable"が特にカッコ良かった。
時折床を強く踏む音が響き、振動が伝わってくる。
正直生で観るまでは個人的な趣味でどちらかと云うとピアノ曲の方が好きだったが考えを改めた。
やはりどっちもカッコ良い。
しかし、こう云う唄い方を聴くとパンクに影響を与えた、とか云うのも頷ける。
とても50を超えた人が唄ってるとは思えない。
そこらの若いヴォーカリストよりは確実にパワーがある。
良く昔の好きだったバンドが再結成して昔の曲を演ってみるが
ヴォーカリストが声出なくなってて非常に恥ずかしい出来になる事が少なく無いが
この人にはそんな事はきっと無縁なんだろう。
休憩に入った時会場のあちこちから
「全然衰えて無い」
と云った声が聞こえた。
発声が本当にしっかりしている。
身体に無駄な力が入っていない。
最近のスタジオ盤では余り叫ぶ事も無くなったが、ライヴでは叫びまくる。
しかし本当に良く伸びる声だ。
ブート等色々ライヴを聴いてみたがこの人が声をからしてたりするのを聴いた事が無い。
それで煙草は吸う、酒は呑む(ステージドリンクはオレンジジュースだった様だが)。
同じヴォーカリストとしては本当に脅威の喉だ。
"Shingle Song","Time for a Change"と往年のファンには涙ものの曲が続き、
特に"Time for a Change"のコーダパートではこれまでで最高のテンションをみせ、
「20分後」とハミルが叫んで第一部終了。
僕はこの休憩時間が不満だった。
折角上がったテンションを持続させたかった。
20分が本当に長く感じた。
合い席のサラリーマンは相変わらずプログレ話に華を咲かせている。
今のうちに話せるだけ話しておいてくれ。頼むから曲中に又話し出さないでくれよ。
そんな事を考えてる内、まもなく客電は落ち、ステージにハミルとスチュワートゴードンが姿を見せる。

今度はギター曲からのスタート。
ハミルのステージは大体何時もピアノ、ギター、ピアノの順で進行する事が多いらしいが、
今回は二部制の為こう云うスタイルを取っている様だ。
考え様によってはその分曲数が増えている訳で、その点は嬉しかった。
心配だった自分のテンションも、ステージ上のハミルのテンションも下がる事は無く
むしろ上がりっぱなしだ。
それは合い席のサラリーマンも同じ様で、"Sign"のイントロが始まった途端大騒ぎしてる。
そして案の定一緒に歌い出しやがった。
殴ろうかと本気で思ったが、
こんな所で騒ぎを起こして折角のライヴが中止になるのは絶対に嫌だったので我慢した。
なるべく唄に集中して雑音は気にしない様心掛けた。
彼が知ってるのは昔の曲だけらしく、最近の曲になると突然大人しくなってくれるのが唯一の救いだ。
その内彼もハミルに圧倒され始めたのか一言も喋らなくなる。
"Patient"からステージはいよいよ佳境へと向かい始め、僕を至福の時へと誘う。
そして・・・"A Way Out"
出口を捜し求める者の哀歌。
さまよい、挫折し、そして繰り返す。
「せめて愛してると言っておけば良かった」
と。
ステージが霞んで見えない。
ハミルの声だけが響く。
それはとても優しく、とても温かかった。
そしてとどめの一撃"Traintime"
ヴァイオリンの弓で弦を叩き、この曲の持つリズムを刻み出す。
たった二人の演奏とは思えない程の迫力。
圧倒的なパワー。
凄まじいまでのエナジーを放出し観客に挨拶をしてステージを去る二人。
アンコールの声に答え、それほどの間を置かず戻って来た二人は、
まずそれぞれがチューニングを始め、やがてそれは聴き覚えのあるフレーズへと変化していった。
"Modern"
"THE SILENT〜"の1曲目に収録されたこの曲は最も有名なハミルの代表曲の一つだ。
今まで散々、それこそ飽きるまでこの曲は聴いていた。
だがやはり生は迫力が違う。
背筋がぞくぞくする。
ハミルにはやはり叫び声が似合う。
絶叫を残し、ステージを去って行く。
割れんばかりの拍手。
次第にアンコールを求める手拍子に変わる。
だが無情にも客電は点けられ、SEが掛かり今日のステージが終了した事を伝える。
しかし拍手は止む事は無く、益々激しくなっていく。
僕も心から拍手をしていた。
もっと観たい。
もっと聴いていたい。
もっとハミルの世界に浸っていたい。
心からそう願っていた。
SEの音量が上がる。
誰も止めようとしない。
「本日の公演は全て終了致しました。」
場内アナウンスが入る。
だが誰も動こうとしない。
手拍子は益々激しくなる。
かつてディープパープルが日本公演に来た時、日本のオーディエンスの事について
「初めは皆静かにきちんと椅子に座ってて全然受けてないのかと思ったよ。
ところがアンコールの頃には凄いリアクションが帰ってきてびっくりした。」
と、語っていたのを読んだ事があるが、まさにそれを地で行く様な熱狂振り。
このままでは収拾がつかない、そう判断したのだろう。
既に服を着替え、片手に火のついたタバコを持ち、
肩からタオルを掛けたハミルがとうとうステージに戻ってきた。
凄まじい歓声、そして拍手。
そんな中、軽く会釈をしてマイクを使わず静かに唄い始める。
それに気付き必死で耳を傾ける。
唄う曲は"Again"
前回('88年)の来日で、やはりアンコールで唄われたと云う。
ファンの間では既に伝説となっており、僕もこの話をされる度、悔しい思いをしたものだ。
だが、今回まさか生で聴けるとは正直思って無かった。
本当に素晴らしかった。
涙が又止まらなくなった。
途中、"You are gone〜"と云う歌詞の所で「早く帰ってね」と云った感じで手を振り笑いを取りながら、
静かに唄い上げてくれた。
心の底から感動していた。
言葉にならない。
こんなにも唄で感動した事は無かった様に思う。
この感動ばかりは幾ら言葉で伝えようとしても伝わらない様に思う。
(だからこんなにも長文になってしまってるんだけどね(笑))正直ここまで凄いとは思って無かった。
こんなにも凄いヴォーカリストがこの世にいたんだ。
ハミルを知る事が出来て本当に良かった、と心底思う。
だがまだ心残りはある。
まだ聴きたい曲は残ってる。
そう、あの曲を演ってない。
絶対に演ると云う保証は何処にも無いし、明日も同じセットかも知れない。
他のアーティストならそれが普通だ。
だがこの人は割とコロコロセットを変えるらしい。
一回目の来日時は二日とも全く違うセットだったと云う。
最近のセットも割と毎日変わってる様だ。
期待は出来そうだ。
頼む、明日は演ってくれよ、あの曲を・・・

 同年3月10日
今日はハミルとの昼食会に参加する為pm1:00までにお台場に到着しなければならない。
昨夜はそれでも何時もよりは早く寝る事が出来た。
だが最近は花粉の所為で何時も2-3時間位で目が醒めてしまう。
この日も例外では無かった。
そしてそのまま寝れなくなり、そうこうしてる内に出発しなければいけない時間が来た。
昨日の事も考え、時間はかなり余裕を持って家を出た。
お台場にはpm12:30に着いた。
待ち合わせをしていた故買屋さんと合流し、会場に入る。
中に入ると一般のお客さんがランチをとっていた。
会費\1000と云うのはTLGが普段やっているランチバイキングの値段だったのだ。
なりほど、そう云う事だったか。どおりで安いと思った。
僕達は白いテーブルクロスの掛かった席に案内される。
立食パーティを想像していたので(実際初めはそうする予定だったらしい)
少し面喰い、少し気恥ずかしくなり、思い切り緊張していた。
僕達は中央の後ろの方へ席を取り食事をとる。
「ハミル達もあそこに並んで食い物取って来るんですかね?」
等と笑いながら待っていると主催者の話が始まった。
この人もハミルのファンで以前ドイツにいた時ハミルのコンサートに行ったら
たまたま隣に座った人がハミルの友人で楽屋に招待されそれ以来親しくして貰ってる事、
今回TLGを作るにあたりハミルは初めから必ず呼ぶつもりだった事、
アーティストと食事する機会を与えられた時非常に楽しいと感じたので今回これを企画した。
今後もこう云う企画は続けたいと思う、等が話された。
おいおい、これなら今後もかなり期待出来るんじゃ無いの?
少なくともここが潰れない限り、ハミルが再々再々来日するのは限り無く現実に近付いた訳だ。
等と考えてる内にハミル、ゴードン、そして第3のメンバーとしてポールリダウトが紹介される。
ポールリダウトは確か'86年の作品"SKIN"辺りから参加したアーティストで、
ジャケットデザイン、サンプリング等を担当していたと思うが、
ライヴのオペレーターもやっていたとは知らなかった。
その後興味深い話は続く。
ライヴの曲順は当日1時間前に決め、5分前に変更がある事も多々ある事。
曲順はハミルとゴードンは知っているが、リダウトには何時も知らされない事。
彼はこの事で自分は観客と同じ状態でやらなければいけない、
その行為をインプロヴァイズだと表現した。うん、カッコ良い。
ゴードンは初めてセッションに参加した時、過去の曲の音源を渡されずに参加した事。
その事によってファンから、そこは違う、あそこが違う、と怒られたらしい。
ハミルには3人の娘がいて、一番下の娘は13歳らしい。
ゴードンは初めて音を聴いた時、何てへんてこな音楽だ、と思った。
ヴァイオリンにエフェクターを掛けたらどうか、と提案したのはハミル。
今は自分よりもゴードンの方がへんてこな音を演ってる、とハミル。
(お客さんの質問に答えて)かつてのアルターエゴ、
リッキーネディアは"K"になりそして現在はダディ(確かこう表現したと思う)になった。
等々、逆にハミルからこちらに
「最近の自分のサウンドについてどう変わったと思うか?」
なんて質問が飛び出したり、ゴードンに
「ハミルはもっとダンスを練習した方が良いね」
なんて言われステップを踏んでおどけてみせる場面も。
そして夏には新作がリリースされる事、
8曲入り(初め10曲と言い掛けたが8曲と言い直した)で参加メンバーは、
ステュワートゴードン、デヴィッドジャクソン(sax,flute,ex.VdGG)、
マニーエリアス(dr.近作では殆どドラムを叩いている)、そしてポールリダウト。
ハミル達はやはりバイキングに並ぶ筈も無く、特別メニューが並べられた。
遠くて良く見えなかったが日本食で、
てんぷらみたいのと寿司みたいの、カルパッチョみたいのが並んでた様だ。
それをちょっと不器用に箸で食しながら、日本食は好きだが食が細いのですぐお腹一杯になる、
と、話していた。
僕は又石になっていた。
只話を聞き漏らさない様気を付けていた。
そんな中主催者が話し出す。
「ハミルはサインとかにとても寛大で、今日も皆さんにサインをしてくれるそうです。
カメラをお持ちの方は写真もOKです。」
なに----!?しまった、何にも持って来て無いぞ、どうしよう・・・いざとなったらTシャツにでもして貰うか。
今日は白のクリムゾンのTシャツだが・・・きっと笑って許してくれるだろう
「尚、何もお持ちで無い方にはこちらで色紙を御用意致しましたので・・・」
おお、良かった。それでサインは大丈夫だ。でも写真も撮りたいけど・・・
どうせなら写るんですも用意しとけや、今なら馬鹿売れだぞ、きっと。
まあでも仕様が無い、写真は諦めよう。
周りを見ると、皆さんちゃんとこの事を想定してたらしく色んな貴重な物があちこちにある。
アナログ盤を3-4枚持って来てる兵もいれば、
幻の1st."AEROSOL GREY MACHINE"のアナログや
"THE FUTURE NOW"のシングルなんて凄い物にサインして貰ってる人も居る。
目の前に座ってた人が黒い本を取り出した。
うをっ、それは!?ハミルの詩集"KILLER,ANGELS,AND REFUGEES"じゃん!!
良いなー、探してたんだよな、それ。
でも何処にも売って無い・・・堪らずその人に何処で入手したか聞いてみる。
なんでも地方のインディーズを扱ってる店に置いてあったのだそうだ。
少し触らせて貰った。嬉しかった。
そろそろ僕等がサインして貰える番だ。
色紙を持ってた人に聞くと一枚\300だと云う。 
なんだ、タダじゃないのね。そりゃそうか。
なんか名前入れて貰ってるぞ、どうしよう。
今更「渉」なんて本名で入れて貰っても自分じゃないみたいだし、ガゼルって名乗るのも何か気恥ずかしい。
でもやっぱりガゼルで入れて貰おう。
「すいません、ガゼルです。あの、ほらアニマルの。(全てカタカナ発音)」
うわ、何言ってんだ俺。やっぱり緊張してる。
主催者の人が
「バンドネームか何かか?」
と聞いて来たので
「まあそんなもんです」
と答えたら故買屋さんがすかさず
「He is a singer」
とフォローしてくれた。どうもありがとう。でもやっぱりなんか気恥ずかしい。
どうにか3人のサインを貰い、昼食会も無事終了し、会場を追い出された。
これからどうしよう、ライヴまで後3時間近くある。
そうだ、昨日から気になってたイエローサブマリンに乗ってみよう、と云う話になリ、
一時故買屋さんと別れる。
で結局それには乗らず、下の階にあったインターネットカフェで時間を潰す事にした。
まだまだ時間は余ってる、眠気は襲ってくる、考えてみたら特に見たいサイトも無かった。
これからどうしよう・・・

どうにかこうにか時間を潰す事が出来た。只単に道に迷ってただけと云う話もあるが。
中に入っても高いだけなので今の内に腹ごしらえしとこうとラーメン屋に入る。
結構美味かった。
昨日の様子だと早めに並べば良い所取れそうなので少し早めに並ぶ事にした。
入り口の所に行ってみる。まだ誰も並んで無い。
ほんのちょっと早過ぎた様だ。
今更何処かに行くのも面倒なので、並んで座ってる事にした。
無事会場入り。中に入ってもまだまだ開演まではたっぷり時間がある。
今日の席は昨日丁度反対側、ステージより向かって左手の前から2つ目のテーブルで、
ハミルのピアノの真正面。中々良い席に座れた。
周りの人達は時間を潰す為食事をとっている。
ん、そうか今度ハミルを呼んで貰うまでここ潰れちゃ困るからな、
ちょっとでも売上に貢献した方が良かったか。
と、後で気付くがその時はウーロン茶だけ頼んだ。
今度行った時は何か頼もう。食いもん美味いらしいし。
大体昨日と同じ時間にスクリーンが降りて来る。
流れてるのも同じものだ。
ハミルのライヴの宣伝が流れる。
「ピーターガブリエルやデヴィッドボウイにも影響を与え、裏プログレ番町とも呼ばれ・・・」
ふーん、デヴィッドボウイは知らなかったな、ん?裏プログレ「番町」!???(笑)
今日は昨日よりはリラックスしてる。
昨日よりは細かい所観れるかな?
そして昨日とほぼ同じ時間に客電が落ちる。

2001.3.10 Peter Hammill at Tribute to the Love Generation

(piano)
1. Easy to Slip Away
(Camerleon in the Shadow of the Night
2. A Better Time
(X my Heart 1996)
3. Touch and Go
(None of the Above 2000)
4. Vision
(Fool's Mate 1971)
5. Unrehearsed
(This 1998)

(guitar)
6. Amnesiac
(X my Heart 1996)
7. Been Alone So Long
(Nadir's Big Chance 1975)
8. Primo on the Parapet
(The Noise 1993)
-------------
9. Nightman
(This 1998)
10.Like Veronica
(None of the Above 2000)
11.Last Frame
((Quiet Zone/The Presure Dome 1977)VdG

(piano)
12.Bubble
(Everyone You Hold 1997)
13.Faculty X
(PH7 1979)
14.Stranger Still
(Sitting Targets 1981)
15.Still Life
(Still Life 1976)VdGG

(encore)

16.Refugees (piano)
(The Reast We Can Do is Wave To Each Other)VdGG

(encore 2)

17.Ophelia (guitar)
(Sitting Targets 1981)

 今日のオープニングは"Easy to slip away"
今日は初っ端からテンションが高い。
昼食会の効果なのかハミルもゴードンも心なしか昨日よりリラックスしてる様に見える。
お客さんの反応も初めから昨日より良い感じ。
昨日みたいな酔っ払いも近くに居ないし、ゆっくり観れそうだ。
だがそんなリラックスムードも最初だけ、あっという間に又ハミルの世界へ引き込まれて行く。
2曲目、"A Better Time"で又目頭が熱くなる。
幾分軽いタッチで曲を奏で、切々と唄い上げる。
4曲目まで進んだ所である事に気付く。
そう、昨日演奏した曲がまだ1曲も無い。
結構選曲は変わるだろうとは予想してたが・・・
次の曲でようやく昨日も演奏した曲が披露されたが、随分感じが違う。
唄のラインもかなり崩してるがアレンジも随分違う。
それを受けた様にヴァイオリンも自由自在に動き回る。
なるほど、結構インプロっぽい演奏の仕方をしてるんだな
アイコンタクトの仕方が露骨で、二人とも思いっ切り顔を覗きこんでる。
でもこう云うスタイルならそうでもしないとまともに演奏にならないか。
ギターに持ち替え、又未披露の曲が続く。
全ての曲に言える事だがレコーディングされた物は特に最近、
殆どシャウトせず、それこそ悟りを啓いたかの様な世界を展開しているが、
ライヴでは全体的にオクターブ上げた感じで唄い、叫ぶ。
繊細な表現も上手いし、何より声に物凄いパワーがある。
本当に音域が広くて、この人の場合高い所だけでなく低い所も相当出るから凄い。
大概どちらかに偏ってるものだが。
一体何オクターブでるんだろう?
第1部最後の曲、"Primo on the parapet"はまさにそんなハミルの唄を凝縮した様な曲だ。
「この曲難しいんだけど」
みたいな事を言って演奏を始める。(この場合の「難しい」は演奏の事らしい)
途中弦を切り、それでも叫び、唄う。
この曲多分滅多に演奏して無いみたいで、コーダ部の素晴らしいシャウト、これを聴けただけで今日は満足だと思ってた。

 休憩に入り、周りの人達の興奮した声が聞こえてくる。
勿論僕も相当興奮していた。
"Easy to slip away","A better time","Vision","Been alone so long"・・・これだけでも涙ものだと云うのに何より昨日とのダブりがまだ1曲しか無い。
これはひょっとするとひょっとするかも・・・
やがて二人がステージに戻りこれ以上は無い位の至福の時を味わう事になる。

 第2部の最初に"Primo〜"の演奏する筈の部分が演奏出来無かったと言って
途中から演奏し始める。が見事失敗して場内大爆笑。
ステージ上の二人も笑って本当に第2部のスタート。
昨日と同じギターからで、"THIS"からの曲"Nightman"
聴いてた時は"THIS"からの曲多いな、と思ってたが、セットリスト作ってみたらそうでも無かった(笑)
昨日よりも力強い感じで演奏された"Like Veronica"
歪んだベースが入って無い所為か随分爽やかに感じたVdGの名曲"Last frame"と進み、
正直こんなに良い曲だとは思って無かった"Bubble"(今回一番の収穫かも)からピアノへ。
軽いインプロを挟み、徐々にピアノのテンポが上がって行く。
そして聴き覚えのあるイントロが奏でられる。
"Faculty X"だ。
この曲、本当にカッコ良い。
背筋がゾクゾクする。
"SITTING TARGETS"からの曲だと紹介された"Stranger Still"
ハミル節全開、定番中の定番だ。
最後のハミルが吠える所が物凄くカッコ良い。
血が逆流してくるのが解る。
そして・・・軽いMCの後静かに唄い出す。
"Still Life"
この曲を待ってた、この曲を聴きたかった。
涙が溢れてくる。

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Still Life

何千もの物言わぬ声が砦に反射し
今や声を失った
我々は一体何になったのだ
我々は一体何になる為に選ばれたのだ
全歴史は今や我々の名前の
音節の大きさにまで
細かく打ち砕かれてしまった
もう二度と前と同じ事は起こらない
不死の人々がやって来た
その時は死を恐れる事は無く
生命の力を繋ぎ止める事は
当たり前の様に思われていた
しかしすぐに解ったのだ
怠惰と惰性は
否定的な物では無いと云う事が
過去の律法、今我々が知っている律法
それらは皆
生き長らえる為の
意思や言葉の様な物だと

全ての時代、全ての恐れ
そして全ての終わりに対して免疫が出来る
何故私は真似事をするのだろう
我々の本質は引き離され
慣れ親しんだ物は乾き切ってしまった
清い物は残っていても
それは我々を無味乾燥にしかしない
何百万年もの時を生き
涙に限りなく近い笑みを浮かべ
そして生き続ける
もし生きると云う事がただ
呼吸、飲食、排泄、性交、嘔吐
そして睡眠だけだと云うのなら
もう既に何の意味も無くなった
果てしなく沈んでいく
時間と云う物さえ通り越して
生きると云う行為が
沈んでいく

死の恐怖を取り除いてしまったら
残っているのは
空想に空想を重ねていく事だけ
陰気な生命を並べたててみよう
終わりの無いエクスタシーに
飽き飽きしていても
ずっと愛してくれる女性と結婚する事
婚約指輪を交わす事
それが究極の夢となる
実に気違いじみている
実にはっきりとしている
それでもまだ充分では無いのだから
その痛みを感じる事無しに
目を閉じる事が出来無い様な
そんな酷く鈍い痛みとは
どんな痛みだろうか
もしなにかを手に入れたなら
どうやってその代償を支払えば良いのだろうか
無限の物達に終わりを告げる
そんな落ちぶれ果てた悲しみとは
どんな悲しみだろうか
もし何かを手に入れたなら
どうやってその代償を払えば良いのだろうか
何を手に入れ
何を無くしたのだろうか
その存在さえも知らないままに
放棄してしまった物はなんだろう

死と時間を無視し
しっかりと立場を守る事に
どう云う意味があるのだろうか
持っていた物は全て失くしてしまった
世俗的な物より「それ」を選び
「それ」を得る為に働いてきたのだ
「それ」とは偽りの希望と解放で
形造られた がらんどうの指輪だったのだ

しかし今
婚礼の寝床は造られ
持参金も支払われた
歯の無いやつれた永遠が
今、私を敷布の闇へと誘い入れる
枯れた身体と
そう私の妻の身体と重なり合う為に
静物(スティルライフ)の中にいる
彼女は永遠だ
永遠だ
永遠だ・・・

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惜しみない拍手が会場を包む。
二人は一度ステージを降り、やがてアンコールを求める手拍子へ。
この曲だけは聴き終わってから益々涙が溢れ止まらなくなった。
もうステージすら霞んで見えない。
ただひたすら拍手をしていた。
勿論もう一曲聴きたいと云うのもある。
この感動を少しでもハミルに伝えたい、
ハミルに届いて欲しい。
その気持ちの方が強かった。
やがてステージに戻った2人が奏で出したのはVdGGの名曲"Refugees"
思わず声が出てしまう。
非常に美しいこの曲を力強く、優しく唄い上げる。
又涙が溢れる。
もう死んでも良い。
本気でそう思った。
最後のアンコールを演奏しにステージに上がったハミルは、
「本当に本当に本当に本当にほんとうに最後の1曲だからね」
と言い、"Ophelia"を演奏し始めたが、
正直そこまでの怒涛の選曲に比べるとかなりおまけっぽさが残ってしまう。
随分軽く聴こえてしまった。
なんて言ったらばちが当るので言いません。
2日合わせて合計31曲、何も言う事はありません。
でも敢えて欲を言えば"The Future Now"と"My Room"が聴きたかった。
でも心底感動したライヴでした。
こんなにも凄いヴォーカリストを知り、生で接する事が出来て本当に嬉しい。
生きてる内にライヴを観る事が出来て本当に良かった。
TLGさん、是非とも来年も再来年も呼んで下さい。