KOAN PROに寄せて (KOAN PRO日本語マニュアル依頼原稿) 河原博文(HERETIC)

コンピュータを使った自動作曲というのは、現在も内外の大学や研究機関で調査・研究を行っており、本格的な自動作曲の解析・フレーズ等のデータ処理を考えるとLISP言語を用いたコンピュータ・プログラムが学術的にはポピュラーです。
一方、一般的に良く知られているソフトウェアとして、Macintosh主体ではありますが、MJam Factory、OvalTune、Music Mouse、Symbolic Composer、CAMPS、ALPS+、BLISS PAINTFigure Mobile II世といった、コード指定やパターン指定等を事前にせず、リアル・タイムに色んなパラメータをコントロールして、自動作曲させるソフトウェアがあります。

このKOAN MUSICは上に挙げたプログラムの中でも、ユーザー・フレンドリーなソフトウェアという印象を受けました。
誰にでも簡単に、環境音楽、リズム・パターン等が作成出来、かつユーザーの思い通りに曲が出来ていく、非常に完成度の高いソフトウェアです。
私自身は、Macintoshユーザーなので、仕事場(Mac/Windowsのプログラマー/SE)のマシンで楽しむだけですが、残念乍らKOAN MUSICに匹敵する環境音楽作成ソフトは見当たりません。
強いて言えば、Mがそうですが、このMは個性が非常に強いので、より現代音楽的なニュアンスが色濃く、耽美的な音の綴れ折りのみの音楽をMから作ろうとするとかなり苦労します。
残念乍ら、現在KOAN MUSICはWindows版しか発表されていないので、是非早急にMac版を出してもらいたいものです。

このマニュアルを読んでおられる方で、Soft Windowsを利用して動作させようと思われているMac Userの方がおられると思いますが、メーカー並びに、代理店はこの件に関してのサポートしません。
又ソフトを作った本人が、Mac版の発売計画を個人的に教えてくれていますので、68Kユーザーの方も今暫く待たてば、この面白いソフトをMacでも使える事になります。(と言ってもう半年以上過ぎていますが......)

1995年12月号のイギリスのMIDI専門誌、Future Music誌にて、このソフトウェアが紹介された時、辛口の批評で評判のこの雑誌が85%の評価を下し、その後も再三、デモ・プログラムのCD-ROM収録をしていたのも、雑誌社の人間が非常に気に入っていた理由からでしょう。
私自身も、このFuture Music誌を94年から定期購読しており、このソフトウェアが紹介された時は非常に気になっていました。余談乍ら、この雑誌は、毎号、CDが付録で付いていて、その号で紹介された楽器のデモや読者の曲が収録されていて、ビンテージ・シンセのサンプル音迄入っています。かつMac/Windows用のCD−ROMも含まれており、デモ・ソフトやらSMFなどなど、MIDIの最新情報はこの雑誌だけで知る事が出来るので、この雑誌の定期購読を強く薦めます。

KOAN MUSICが一躍世界的に知られる様になったのは、アンビエント・ミュージックの大家、Brian Enoがこのソフトウェアを使い、コンピュータ・データだけの作品を発表した時からではないでしょうか?
INTERNET上のBrian Enoに関するmailing listにて、このGenerative Music 1(その場で生成される音楽)が発表された時は話題騒然となっていたのが記憶に新しい。
SSEYOの日本代理店、eYESでは、勿論このGenerative Music 1も取り扱っているので、是非御購入をお薦めします。
曲そのものは、暗めのアンビエント・ミュージックやら初期シェーンベルク、インダストリアル、Music For Airportタイプ、アヴァンギャルド、Penguion Cafe Music等非常にバラエティに富んだ作品集となっています。
「私はKoan Proをここ数年間に生まれた様々なミュージックテクノロジーの中でも、最も素晴しいものの一つであると思う。私もかつてこのようなものを考えていたことがあったが、今それはここにあり、動いている。」-Brian Eno-
http://www.sseyo.com/genmus1.html
Enoはこの作品発表に併せて96年3/24〜4/1に、ベルリンでGenerative Musicのサウンド・インスターレーションを行っています。
尚、Generative Music 1のアウト・テイク・データがhttp://www.sseyo.comのどこかにあるそうです。("Methane"、"Organa2"、"Babylon Papillaris")

150ものパラメータを巧く使いこなして、自分のオリジナル・データを作成する事が勿論、可能ですが、エディット出来ないモードで、セーブする事により、オン・ライン上やEnoの様な作品発表がアマチュアからプロの方迄出来るのは、非常に興味深い事だと思います。
実は、私の次作品当たりで、KOAN MUSICを使った作品発表を考えていて、Enoと同じ様な作品発表形態になるか、もっと違った形になるか、Tim Coleと色々と相談をしている最中です。私もEnoと同様、只の音楽CDだけの作品発表はしたく無いので、こういった新しい形の作品形態のアイディアには非常に興味を惹かれます。
まして、このKOAN MUSICで作成された音楽のユニークさは演奏する毎に変化する点です。逆に言えば同じ演奏は2度と再現されません。正にサウンド・インスターレーションが簡単に出来てしまいます。

閑話休題

ともかく、まずはサンプル・データを読み込んで再生してみて下さい。色んな可能性が見えてくると思います。
こんな刺激的なソフトを作り上げたTim Coleに乾杯!!

ところで、SSEYOの日本代理店、eYESでは、Perpetual Music,IncのSOUNDERという、又違ったアンビエント・ミュージック作成ソフトも紹介しています。(この会社の廻し者と思われそうですが、ここの人達もそういった変なソフトが好きなんでしょうね。)
SOUNDERは、KOAN MUSICと同じく、Windows用のみで、ブロック崩しみたいなグラフィック・データが動く度に、音に変化が与えられ簡単にアンビエント・ミュージックが出来てしまいます。国内販売価格が非常に安いので、これも是非御購入をお薦めします。
http://www.sounder.com

因みにSOUNDERはアメリカ人のプログラムで、Tim Coleはイギリス人です。
又、Tim ColeはAlgorithmic CompositionやBrian Enoのmailing list (INTERNET上)に良く投稿しています。

余談乍ら、KOAN MUSICの作者、 Tim ColeMJam Factory、そしてmaxの作者のDavid ZicarelliらはINTERNET上にメール・アドレスを持っています。
予想外にフレンドリーな人達なので、こういう事を次の音楽ソフトに取り入れてくれないかといった要望を出すのも面白いと思います。
只、注意を喚起したいのは、こういったソフトウェアはあくまでもツール(手段)であってこれを使う事が目的ではないという事を自覚しないと、真のオリジナルな音楽は作れないという事です。



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