大学 66回、68回、99回
で演奏されている「ベタ・コラ・カフェ」について調べています。
概要にて、3回の演奏会で演奏されている旨を記述したが、実際にはこの3回での曲名(邦題)は異なっている(それらに原題は書かれていない)。
年 | 回 | 邦題 | 作曲者名(編曲者名) |
---|---|---|---|
1949(S24)年 | 66回 | カフェーへの路 (70年史には「ベタ・コラ・カフェ」) | B.カイネ(伊藤翁介) |
1951(S26)年 | 68回 | 街へ行く路 (これは70年史の記述。プログラム冊子未確認) | なし(伊藤翁介) |
1967(S42)年 | 99回 | 街へ行こう (プログラムには曲目記載がなく、音源で 司会者がこのように紹介していることを確認) | なし |
66回はプログラム冊子と70年史との組み合わせで「カフェーへの路」が「ベタ・コラ・カフェ」と判っている。
資料班の作業中に99回の音源を聴いていたところ、「街へ行こう」が「ベタ・コラ・カフェ」であることを山口さんに教えて頂いた。
68回はプログラム冊子が資料班でも入手できていない為未確認なのであるが、99回との題の近似、ギタートリオであることと編曲者の一致から、同じ曲と考えている。
当初の手がかりは「ベタ・コラ・カフェ」というカタカナ表記だけであったが、 山口さんの楽譜DBにて「Bete a cola cafe」であることが判明した。 これをキーワードにWeb検索したところ、レコードが何枚か見つかった。
発売時期 | 発売場所 | レーベル | 記号番号 | 曲名表記 | 演奏者 |
---|---|---|---|---|---|
1929年7月 | NY(ニューヨーク?) | Columbia | Co 4422x W 97319 | Vete a colá café | Rita Aurelia Fulceda Montaner y Facenda |
1942年1月20日 | Argentina | Victor | 23-0239-1 39425 BVE059792 | Bete a colá café | Efraín Orozco y su Gran Orquesta de las Américas La Mexicanita y sus chinacos |
1948年 | Buenos Aires, Argentina | Victor | 60-1459 B面-3 | Bete a Colá Café | René Cóspito and his Jazz Band |
情報をまとめると、原題及びジャンルは以下のようになる。
Bete a Colá Café (Vete a Colá Café) , conga
吉川さんより99回の(?)譜面を見せて頂いたところ、「Bete a cola cafe」と記載されていた。
当初の手がかりは「B.カイネ」の表記だけであった。
前述のレコード情報でカイネ部分の綴りが判明。
そこから芋づる式にフルネーム他が判明。
Félix Benjamín Caignet Salomón
フェリックス・ベンジャミン・カイネ・サロモン
*1892/03/31 Santa Rita de Burenes, San Luis, Santiago de Cuba, Cuba
†1976/05/25 La Habana, Cuba
キューバの作曲家であることが判明。この曲以外には次のような曲がある模様。
さて、この原題は訳すとどうなるのだろうか。 キューバ、アルゼンチンということで、スペイン語であろう(これは結果的に間違いないと思う)。 ところが、"Bete"という単語は標準スペイン語に存在しない。 一方、"Vete"ならば存在する。"Vete"を前提にすると、次のようになる。
vete = ve te
ve = irの命令形 = [英] go
te = [英] you
a = [英] to
cola = [英] cola [日] コーラ
cafe = [英] cafe [日] カフェ
"vete"で「行け」という意味になる。
"Vete"と"Bete"。この違いが発生した原因を想像してみるに、ポイントはスペイン語の「BとVが同じ発音である」という特徴であろう。
"Bete"はキューバかどこかの訛りかもしれない。
(99回で実際演奏された)ギター吉川さんの先生も「スペイン語を知らない受け手に題名を音声で伝えた場合、間違う可能性はある」という趣旨のご意見を下さったとのこと。
「1929年には"Vete"だったものが1942年に"Bete"になった」という時間軸は、そのようなストーリーを想起させる。
"Cola Cafe"はいわゆる「コーラ・カフェ」(コーラやコーヒーを出す軽食屋)なのか否か(他に思いつかないが)。
コーラは1886年に発明されたそうなので、年代的には問題ない。
66回、68回当時はまだコーラ系飲料が一般販売されていないようなので、訳しようがなかったのか、敢えてコーラという単語を邦訳から外したのかもしれない。
以上をまとめると、「ベタ・コラ・カフェ」は「コーラ・カフェへ行きなさい」という訳になる。
伊藤翁介氏は本当に多くの色々なところから曲を導入しているという印象がある。 当時どのようなコネクション/ルートがあったのだろうか?やはりレコードであろうか。