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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】第2852790号
(24)【登録日】平成10年(1998)11月20日
(45)【発行日】平成11年(1999)2月3日
(54)【発明の名称】木管楽器の管体構造
↑(51)【国際特許分類第6版】
G10D 9/00
【FI】
G10D 9/00 B
【請求項の数】2
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願平2−132041
(22)【出願日】平成2年(1990)5月22日
(65)【公開番号】特開平4−26893
(43)【公開日】平成4年(1992)1月30日
【審査請求日】平成5年(1993)6月18日
【審判番号】平7−26307
【審判請求日】平成7年(1995)12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】999999999
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
【住所又は居所】静岡県浜松市中沢町10番1号
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 重雄
【住所又は居所】静岡県浜松市中沢町10番1号 ヤマハ株式会社内
(74)【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹 (外4名)
【合議体】
【審判長】下野 和行
【審判官】近藤 幸浩
【審判官】宮島 郁美
(56)【参考文献】
【文献】特開 昭55−26551(JP,A)
【文献】特開 平1−101587(JP,A)
【文献】特開 昭61−160798(JP,A)
【文献】実開 昭53−139831(JP,U)
【文献】実開 昭62−65692(JP,U)
【文献】実公 昭48−16972(JP,Y1)
【文献】登録実用新案48066(JP,Z1)
↑(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ベル、管本体、バレルおよび歌口が連結されてなる木質材またはABS樹脂からなる木管楽器の管体構造であって、前記ベルとバレルの少なくともいずれか一方を、内管とこの内管の外周部を被覆する外管とで構成し、前記外管を木質材またはABS樹脂で形成し、前記内管を、純アルミニウム、高力アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル銅合金、洋白からなる群から選択したいずれかの金属で形成したことを特徴とする木管楽器の管体構造。
【請求項2】ベル、管本体および歌口が連結されてなる木質材またはABS樹脂からなる木管楽器の管体構造であって、前記ベルを、内管とこの内管の外周部を被覆する外管とで構成し、前記外管を木質材またはABS樹脂で形成し、前記内管を、純アルミニウム、高力アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル銅合金、洋白からなる群から選択したいずれかの金属で形成したことを特徴とする木管楽器の管体構造。
↑【発明の詳細な説明】
<産業上の利用分野>
本発明は例えばクラリネット、オーボエ、ファゴット等の木管楽器の管体構造に関し、管体を内外2層で構成するとともに、その管体の内層部を、外層部に比較して管長方向でのヤング率の高い材料で形成することにより、管体の機械的強度の向上、寸法精度の向上、製造工数の削減、および、音質の向上を図ったものである。

<従来の技術>
従来のクラリネット等の木管楽器の管体材料としては、グラネディラ、カエデ、カバ、ホンジュラスローズ等の木質材料、または、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂が使用されていた。
例えばクラリネットの円筒管(バレル、上管、下管、ベル等)はアフリカ産のローズ材から作られている。
<発明が解決しようとする課題>
しかしながら、このような従来の木管楽器の管体構造にあって、グラナデイラ等の木製管体では、乾燥状態により音が変わる。そして、その響きが悪い場合には不良材となる。また、湿気を吸収し易く、寸法変化を生じる。このように材料としての安定性が悪く、耐環境性の低下を招致していた。
特に、ベル、バレルは曲面形状に形成されているので、加工時や衝撃を受けた時、曲面に応力が集中する箇所ができて割れ、欠け、逆目等の欠点が生じ易く、これらによって不良材となり易く、その歩留まりが低下している。
一方、樹脂製の管体の欠点としては、まず、寒冷地では使用することができない。温度収縮が大きいため、割れたり、寸法変形を起こすからである。
また、内径の寸法精度が悪い、衝撃に弱い等、製作精度、機械的強度が低い。
更に、音の安定性に欠ける。すなわち、製造時の管体精度が不十分である結果、環境温度による膨張、収縮に起因する管体の歪みにより、音が不安定になるのである。
そこで、本発明の目的は、曲面形状に形成されたベルやバレルの機械的強度の向上、寸法精度の向上、製造工数の削減、および、音質の向上を両立を達成した木管楽器の管体構造を得ることである。
<課題を解決するための手段>
本発明は、ベル、管本体、バレルおよび歌口が連結されてなる木質材またはABS樹脂からなる木管楽器の管体構造であって、前記ベルとバレルの少なくともいずれか一方を、内管とこの内管の外周部を被覆する外管とで構成し、前記外管を木質材またはABS樹脂で形成し、前記内管を、純アルミニウム、高力アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル銅合金、洋白からなる群から選択したいずれかの金属で形成した木管楽器の管体構造である。
また、本発明は、ベル、管本体および歌口が連結されてなる木質材またはABS樹脂からなる木管楽器の管体構造であって、前記ベルを、内管とこの内管の外周部を被覆する外管とで構成し、前記外管を木質材またはABS樹脂で形成し、前記内管を、純アルミニウム、高力アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル銅合金、洋白からなる群から選択したいずれかの金属で形成した木管楽器の管体構造である。
<作用>
本発明に係る木管楽器の管体にあっては、管体を内管と外管とにより構成しているため、木管楽器の種類に応じて最適設計が可能である。内管と外管との管長方向のヤング率(内部摩擦損失;tanδに大きく寄与する値)を変化させることが可能であり、その音質を任意のものに設定することができる。
また、内管については管長方向においてヤング率の大きい材料で形成したため、低周波数成分の内部摩擦損失が減る。その結果、低音域での音程、響きが安定することとなる。
更に、内管を上述のようにヤング率の大きい材料で形成したため、その管体内部の剛性が高く、温度、湿度による管体の歪み変形がない。
<実施例>
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
第1図および第2図は本発明の一実施例に係るクラリネットの管体構造を示す図である。
第1図において、11はバレル(俵管)である。このバレル11においては、所定の形状の円筒管である外管12と、この外管12の内周に嵌入された内管13と、から構成されている。すなわち、外管12は木材またはABS樹脂により成形されており、この外管12の内孔12Aには内管13が圧入、接着されている。
内管13は高力アルミニウム合金(ジュラルミン等)、銅合金、ニッケル銅合金、洋白からなる群から選択したいづれかの金属により成形した所定厚さの円筒管で構成されている。この結果、内管13の管長方向の縦弾性係数ELは、外管12のそれよりも大きいものとなっている。
なお、各材料の縦弾性係数EL(kg/mm2)は、以下の通りである。ABS樹脂は140〜300、硬質の木材(グラナディラ等)は1120、銅は11900、黄銅(35%Zn)は10500、モネル(Ni70−Cu30)は18200、銅は19600、純アルミニウム(1200−H18)は6930、高力アルミニウム合金(7075−T6)は7210である。
以上の構成に係る管体(バレル)11にあって、内管13はその縦弾性係数ELが大きいため、従来の単一材質の構造の管体に比較しても機械的強度に優れている。また、その製造が従来に比較して容易であり、その寸法精度も向上している。更に、音色の調整は、その内管13の肉厚、熱処理(焼き入れ、焼き戻し等)、加工硬化の程度等を調整することにより自由に行うことができる。加工硬化は例えばハンマリング法、バニッシュ法等による。
また、内管13によればその材質が高力アルミニウム等であるため、管長方向の縦弾性係数ELが大きい、すなわち、その内部摩擦損失(tanδ)が小さい。この結果、第3図に示すように、発生音に対する低周波数成分に対する管体11内部での摩擦損失が木材等に比較して減少し、音として外部に放射され易く、低音域の音の伸びが良くなる。また、高音域の立ち上がりもよい。そして、これらの場合に外管12は内管13よりも内部摩擦損失が大きいので過度の響きを抑制している。第3図はクラリネットにおける音圧の時間変化を示す図で、実線は本実施例の場合、破線は従来例の場合をそれぞれ示している。
更に、内管13の内部摩擦損失(tanδ)が小さすぎる場合は、この内管13の接着に減衰率の大きい(内部摩擦損失の大きい)接着剤を用いる。また、接着剤の充填体積を大きくすることにより調整するものとする。
第2図において、21はベル(朝顔管)である。この円錐形状のベル21についても外管22はABS樹脂、又は、硬質木材等で、内管23は高力アルミニウム合金、又は、銅合金等で、それぞれ形成している。内管23の外管22への接続は圧入、インサート成形、両者の接着剤による接着、ねじ固定等による。
なお、木管楽器としては、上記クラリネットの他にもファゴット、オーボエ等に本発明は適用することができる。
<発明の効果>
以上説明してきたように、本発明に係る木管楽器の管体によれば、第1に、その音質が向上する。すなわち、音の響きが良好となる。これは低周波数成分の管体内部での摩擦損失が減るので、低音域の音の伸びが向上するからである。その結果、フィット感が得られる。所謂、メタリックな音になるものである。また、ストレートに音が出る。したがって、吹奏感が向上する。
また、音の安定化が図れる。管体内部の剛性が高く、温度、湿度による管体の歪み等の変形がないためである。
第2に、該木管楽器についてその設定自由度が拡大する。例えばその音質を任意に変更可能である。すなわち、管体の内側と外側との管長方向のヤング率(内部摩擦損失に寄与する値)を変化させることが可能である結果、音質の変更、設定ができるものである。
第3に、機械的強度が向上し、生産性が向上する。したがって、温度、湿度の影響に左右されない(耐環境性が向上)。寸法精度が向上し、歩留まりが向上するものである。特に、ベルとバレルは曲面形状に形成されているものであるため、加工時や衝撃を受けた時、曲面部に応力が集中する箇所ができ、割れたり、欠けたり、逆目が生じ易いが、本発明においては、二重管構造として、内管を金属で形成しているので、その心配がない。また、外管を木質もしくはABS樹脂で形成し、内管を純アルミニウム、高力アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル銅合金、洋白からなる群から選択したいずれかの金属で形成すると、このような組み合わせの結果として、@音質の選択幅、調整幅が拡大する(設計自由度の拡大)。A純アルミニウム、高力アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル銅合金、洋白からなる選択するということは、それぞれ金属固有の弾性率を選択することを意味し、弾性率が変わると音質も変わるので、その選択および組み合わせにより音質を調整できる。B純アルミニウム、高力アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル銅合金、洋白は、ハンマリング法、バニッシュ法等により加工硬化の程度を自由に調整できる金属である。音色の調整は、肉厚、熱処理、加工硬化の程度によってもなされるものであり、これらの金属を選択することにより、さらに微妙な加工工程の段階で調整が可能である。
↑【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例に係るクラリネットのバレルを示すその半断面図、
第2図は本発明の一実施例に係るクラリネットのベルを示すその半断面図、
第3図はクラリネットのエンベロープ波形図(音圧の時間変化のグラフ)である。
11……バレル(管体)、12……外管、13……内管。
↑ 【代表図面】 【第1図】 【第3図】 【第2図】
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