elemental world
 



陽が沈んだ。
風は強く吹き荒れ、辺り一面の草原が、応えるように、なかば抗うように騒いだ。

戦線の中で一番激しかったであろう戦いが過ぎ去ったにもかかわらず、 更にその風は疲れた兵を落ち着かなくさせていた。

(いけない)

・・・心地よい風ではない。

風と親しい陣営であっても例外ではなかろう。むしろ敏感に感じ取った者もいたはずだった。

「それ」の一部を自分が起こしている自覚が、ウィルにはあった。めずらしく心が、・・・彼に心があるならば、まさにそれが・・・乱れていた。
・・・今日出会った敵陣の若者の顔が目の前をちらつく。まっすぐに自分をみつめたその顔がだんだん影をうすくしていき、草原のうねりにまかせかき消えていく。 そんなビジョンが若者の気配を追うのをやめてからずっと、ウィルの前で繰り返されていた。
気にしない、などということができないことはウィルにもわかっていたから、思い出すに任せていた。
が、風はそんな彼に同調した。 ウィルの奥底に否応なく入ってき、出ていき、草原を唸らせる。

彼には、もう会うことはない。

初めてではないにせよ・・・それはウィル・ハルネル・・・ネルにとって、あまり味わいたくない類の気分だった。
(しばらく、離れなきゃ)
まだ戦は終わったわけではない。今の自分は簡単にこの世界に干渉できるのだ。
自分をコントロール出来ないならばここにいるべきではない。



遥かな記憶の、忘れ得ぬその人に。


…ただ、会いたかった。


* * *


Elemental World は、おえかきさんネットワークの参加型イラストバトル企画です。

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