脚注としてQ&Aコーナーを作りました.もし読んでて行きづまったら見て下さい.
今年(1997年,当時私は18才)の3月に本屋である本と出会った.そもそもなぜ本屋に足を運んだか,囲碁をおぼえるためだった...が,数学書を眺めていた.そうするとある一冊の囲碁について解析(少しだけだが)してある本があった.「組み合わせゲームの裏表,山崎洋平,シュープリンガー東京」である.その本を買った.ゲーム理論と呼ばれている分野らしい.以下は僕がゲーム理論を勉強した過程に基づいて(今も勉強中ですが),ゲーム理論という分野を紹介します.単にゲームといっても大きく5つに分かれると思います.

1.確率のみに左右されるもの(ダイスゲーム,ジャンケンなど(異論のある人もいるかもしれないが..))
2.確率プラス技術(麻雀,多くのトランプゲームなど)
3.囚人のジレンマに代表されるもの(言葉での説明は難しい).意味は少し変わってくるがプレーヤーが2人だけでは成り立たないものと言っても良いかもしれない.
4.将棋,囲碁など技術のみのもの.但しこれらのものはある局面において,あるプレーヤーが先手(自分の番)であろうと,後手(相手の番)であろうと必勝,というシチュエーションが存在し得る.すなわち劣勢になったら2手続けて打っても挽回出来ないこともある.言葉を足せば,ポイント制のゲームと言えるかもしれない。25対3から挽回するには一手では足りないということ。
5.これから説明するもの.石取りゲームに代表される.このゲームはシビアである.というのもその人に十分な知識があったなら,2手続けて打ったら絶対に大逆転?出来るのである.

ところでその本を家で読むとさっぱし分からん.3月25日大数こと大学への数学(東京出版)発売.「宿題」のコーナーになんとあるゲームについての問題があるではないか!その問題とは...

9カケ6と8カケ7の板チョコがそれぞれ一枚ある.先手、後手の二人が次のルールのもとに交互に食べていく.
(1)一枚を選んでそれを縦か横の一本の区切りの線で折って2つにわける(1つは空でも良い).
(2)空ではない一方を食べる.
(3)最後のチョコを食べる方の勝ち.
さて後手の人は勝てるだろうか.
(大学への数学(97年4月号)宿題(Petre Frankl)より,原文が手元にないので表現は異なっています)

この問題は少し考えたら解けるだろう.問題は2枚のチョコがそれぞれ任意の大きさの時どうなるか?さらには2枚が一般のn枚になったら...さらにはチョコレートが3次元,4次元?5次元???...(食事中の人ゴメンね)となったらどうなるのだろうというとだ.「これはあの本が使えるかもしれない」と思い必死に勉強する.薄々と解ってくる,ような気がする.似たようなゲームについてはその本で解析してある.が,チョコレートゲームについては書いていない.この種のゲームにはグランディー(Grundy)数,グランディーの定理というが大きく関わっているようだ.まずそれについて勉強,勉強,勉強...だんだんと解ってくる.ニム(後述の予定)などの簡単なゲームについては理解できる.さて,問題のチョコレートゲームにとりかかる.

ここでグランディー数G(D)について説明しておきましょう.本には集合を用いた厳密な定義しか書いていなかったのですが,理解するのが難しく(少なくとも僕にとって),あまり好きでないので砕いて書きます.グランディー数とはゲームの途中に出現しうるすべての局面につけられた背番号のようなものです.だから非負整数です.どの様に決めるかというと,まず後手必勝の局面に0をつける.次に先手必勝の局面に1以上の整数をつけていくが,まず背番号nの局面からは1〜n−1のすべての背番号に移れなければならない.また,同じ背番号には移れない.これで帰納的に一意的に定まるはずである.(脚注参照)
これさえわかれば後は簡単!これでチョコ1枚のそれぞれの大きさについてのグランディー数が表に出来る.
  横  1  2  3  4  5  6  7  8..
縦
1       1  2  3  4  5  6  7  8
2       2  1  4  3  6  5  8  7
3       3  4  1  2  7  8  5  6
4       4  3  2  1
5       5  6  7    1
6       6  5  8      .
7       7  8  5        .
8       8  7  6
:
残りも全部定まります.0が一つもないのは,先手がチョコを全部食べちゃえば勝てるからです.このチョコ一枚の自明なゲームを解析することによって,二枚,三枚の自明でない難しいゲームも解析できるのです.不思議ですねぇ.
そうすると縦と横との2変数を用いて定式化できないだろうか?ということです.予想できますか?予想できたらそれが定義に合っているか証明しましょう.

さて,チョコが2枚,3枚...となったときです.2枚で一つの系とみなして4変数でグランディー数を定めればよいのです.簡単ですG(a,b,c,d)=G(a,b)@G(c,d)が成り立つのです.これがグランディーの定理です.証明は割愛.但しここで@は繰り上がりのない2進和を表します」.例えば10011@11001=1010です.普通は+の周りをまるで囲みます(表示できないので).3枚以上の時も全く同様です.チョコがn次元になってもn次元のチョコ一個のグランディー数を求め,繰り上がりのない2進和をとればいいのです.解ってしまえば簡単でしょう..

もっと詳しく勉強したい!!という方は下の本がいいかもしれません.一番上の本以外は普通の本屋では手に入らないかもしれないです.
組み合わせゲームの裏表,山崎洋平,シュープリンガー東京
石取りゲームの数理,一松信,森北出版
Winning ways...,Conway, Guy, Berlekamp,Academic Press London
京大数理研講究録301のp129-142 等,山崎洋平

Q and A のコーナー(Special thanks to Hiromitu Ichikawa)

質問・・・ 縦1 横8 は8 ですが、そこから 6の縦8 横3には移れるのですか?

返答・・・汚いので,食べたチョコは吐き出さないで下さい.
問題文に書いてあるとおり,一回の試行で出来ることは,縦もしくは横のどちらかを任意の自然数減らすことです.

質問・・・ゲーム理論の表のルールが分かりません.なぜ、3*4 から 3*2 にはいけないの?

返答・・・うーん.誤解を招いてしまったみたいですね...移れます.
表の縦,横というのはチョコレートの縦と横の長さを表しています.それはOKですよね.
「次に先手必勝の局面に1以上の整数をつけていくが,まず背番号nの局面から は1〜n−1のすべての背番号に移れなければならない.また,同じ背番号には 移れない.」
別に背番号は増えてもいいのです.ただ現時点より下の番号で移れない番号があってはならな いだけです.
ただ,少し考えれば解ると思いますが,背番号を増やす手は必勝手順を選ぶ 上では考えに入れる必要がない.というか選んではならないのです.自分より低い背番 号のどれかが唯一の正解だからです.


質問・・・局面から局面に移るというのは,先手,後手とはどういう関係を持つの?

返答・・・僕にはこの質問の意味があまり分かりません.が,多分この様なことでは?
例えば先手と後手が3手ずつ打って,後手が勝ったとしましょう.そしたら,初期状態と,最後の何にもない状態を含めると7個の局面が存在するわけです.
ひょっとしたら最初の先手後手と,ある局面での先手必勝,後手必勝をいっしょにしてしまったのでは?ある局面で先手必勝というのはその局面で先に打つ人が勝てるだろうといっているのであって,初期状態(問題文)の先手とは関係ないです.だから問題文の先手,後手を一郎,次郎に置き換えてみて下さい.

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