KNIGHT AND SISTER2《騎士と乙女2》

第四章 獄中の乙女心 3

歩いていると、先輩修道女とすれ違った。
「何か仕事はありますか」と訊ねたが、先輩修道女は、
「いいえ。今日も憲兵が来て、取調べの続きをするそうよ。副院長は『なるべく自室に待機しているように』と仰っていたわ。あなたもあまり歩き回らないほうが良くてよ、妙な疑いを掛けられたくないのならね」
と忠告めいたことを言い残し、去っていった。
「取調べかぁ……」
フィアは立ち止まって考え込む。
そういえばまだ取調べを受けていない。
これから孤児院へ行って、火事の後片付けを手伝うつもりでいたが、修道院を出る許可を貰えるのだろうか。いささか不安に思いつつも、汗水垂らして作業をしているだろうマルギット以下、孤児院の気のいいシスターたちのことを考えると、なんとしてでも許しを得て手伝いに駆けつけなければ、と焦りのような気持ちが沸いてきた。
「手紙は、アラリスさんが出してくれるって言ってたものね」
彼女に任せておけば、そうそう手抜かりはないだろう。そう思い、フィアは小走りで院長室に向かった。けれど院長室の前にはすでに武装した憲兵が立ちふさがっており、院長は彼らと何やら深刻そうな話をしている。

「──閉鎖ですって!? まあ。そんなこと無理です。できるはずもありませんわ!」
「しかし院長殿。犯人はまだ、この修道院内に潜伏しているかもしれないのですよ」
「それを捕まえるのはあなたがたのお役目でしょう。何もそんな、閉鎖だなんて大げさな」
「ええ、そうです。役目だから、なんとしても犯人を検挙しなければならないのです、我々は! だが失礼ながらあなたの甘いお考えでは、いつ第二、第三の犠牲者が出てもおかしくはない。そうなったときにあなたはどう責任を取られるのです? 院長殿!」
「せ、責任なんて、そんなことを言われましても……」
「ここの責任者はあなたでしょう!」
「そ、そうですけれど、閉鎖となると、その……いろいろと手続きが。何しろこの修道院設立以来、一度たりともこんな事態になったことがないのですから! まずは教区の教会のほうで、司祭さま、司教さまのご判断を仰ぎませんと……。わたくしには、なんとも……」

「──あ、あのう!」
押し問答をしている院長と憲兵の後ろから、フィアが勇気を振り絞って声を出す。
院長と憲兵が振り返り、なんだ、とばかりに両者同時に顔をしかめた。それにかなり怯んだが、フィアは曲がり角の壁にへばりつきながら、残った勇気をかき集めておずおずと口を開く。
「こ、孤児院が、火事と聞いて……。片付けを手伝いに行きたいんですが」
「そんなことはあちらの修道女に任せればいいでしょう!」
院長は急に怒りが爆発したようにわめいた。ふくよかな体型の院長は、いつもは柔和で温厚、優柔不断なきらいはあるが滅多に怒ったりはしない。怒るときも直截な言い方は避けて、どちらかというと遠まわしにお説教めいたことを言うのが通常だ。けれどもこのときばかりは例外だったらしい。
「こんなときに修道院の外に出るだなんて。許可できません! 自室に待機していなさいな!」
「で、でも、あちらは人手が」
「そんなことはわたくしがちゃんと考えています。人手は足りていると思うから誰も行かせないのです、良いからおさがりなさい! 大事な話をしているのが分からないのですか!?」
「す、すみませんでした……」
フィアは落胆し、すごすごとその場から引き下がった。なんとなく険悪な雰囲気だったから、今割って入ってもろくなことにならない予感はしたのだが。その予感は残念ながら当たってしまった。
「──孤児院が火事になったのですか? そんな話は聞いていませんが」
憲兵の緊張した声が背中に聞こえる。
「え、ええ。その、あちらはうっかりした者が多いですから、火の不始末でもしたのでしょう。怪我人もおりませんし、特にご報告するほどのことではないと思いまして……」
「どんな些細なことでも、逐一耳に入れてくださらなければ困りますな!!」
「も、申し訳ありません……。次からはそのようにいたしますわ……」
院長が萎縮したように謝っている。
自分のせいで叱られているようで、フィアはなんだかいたたまれなくなってしまい、逃げるようにだっとその場をあとにした。


「はあ……。なんだか、うまくいかないわ。タイミングが悪いのかな」
ため息をつきながら、次に向かった先は厨房だった。
院長に追い払われたあと、忘れていた空腹が「きゅるるるる!」と鳴って、自分の存在を悲痛に訴えかけてきたためだ。フィアはそういえば腹ぺこだということに思いいたり、そうすると今朝のギゼラの『厨房にいくらか余っていると思いますよ』という言葉が、夢のように美しく、きらきらした光に彩られて思い出されたのだった。
「えーと、アラリスさんのと、デュリさんのと、わたしのと……」
最低でも三つはパンが必要だ、と計算する。
「あと、チーズでもあればいいんだけど。スープは……もう、冷めてるかな」
ぶつぶつ言いながら、厨房のある建物の中に入る。
食事どきではないから、もうそこには人けはない。けれどかすかに、冷えたスープのかおりがした。固まった脂を思わせる独特のにおいもまじっている。フィアは動物のようにスンスンと鼻を鳴らしながら、(温めなおしたら絶対おいしいスープだろうな!)と確信した。
きっと鳥か何かでだしをとったに違いない。考えると涎が出そうになった。
「でも、かまどに火を入れたら煙が出ちゃうし。我慢、我慢……」
きりっと顔を引き締め、厨房の扉の前に立つ。
開ける前に左右の廊下を確認してしまったのは、さすがに気が引けたからだ。別に自分が毒殺犯に間違えられるとは思っていないが、パン泥棒というのはあまり褒められた行為ではない。
「……でも、それはもともとわたしの口に入るパンだったのよ」
フィアは扉の取っ手に手をかけ、考え込むように呟いた。
「だからわたしは、パン泥棒をしにきたんじゃなくて……。えっと……」
何か適切な言葉を探して、しばらく沈黙する。
そのあいだ、扉の中で息を潜めている者の存在には──幸か不幸か気づきもせず。
「そう、わたしは自分のパンを取り戻しにきただけよ! 泥棒なんかじゃないわ!」
フィアは勢いよく、両手で扉を開け放った──それは木製のごく軽い扉で、少し力を入れただけで勇ましく向こう側に開いた──
そして直後、悲劇は起こったのだ。


──その、少し前。
「──全然、誰も来ないわ」
厨房の隅に、しゃがみこんだシスター・ジュリアの憮然とした声が響いた。
彼女は待ちくたびれていた。
それもそのはずで、もう何時間もこうしている。いい加減足も痺れてきた。
『厨房に毒殺犯が現れるはずだから、それを捕まえる』というのは、シスター・エミリアが思いついたことだった。シスター・カタリナの取り巻きとして、ジュリアとエミリアは行動を共にすることが多いのだが、ふたりだけで一緒にいるというのは今まであまりなかった。
けれど今、そのカタリナは前とは人が変わったようになってしまっている。
いつも明るく、楽しいことや面白いことが大好きで、暇つぶしの案があると聞けば目を輝かせて身を乗り出してきたカタリナ。人が迷惑がるようなことであっても、『そんなの関係ないわ。わたしたちが楽しめればいいじゃない』と堂々言い放ち、時々女とは思えないような豪快なことをやってのけたりした。
修道院の規律が最近ゆるみがちだ、という雑談から、そうした規律を徹底させる独自の組織があるべきだという話になり、しまいには院長と激論を戦わせ、院長を半泣きにして組織を作ることを認めさせた。
その組織は、今まで『ちょっと気に入らない』と思っていた気取った修道女や、どんくさい修道女をチクチクいじめるのに大いに役に立ったものだったが、そうした『気晴らし』的な余興とは別に、先だって王都が震災に見舞われたとき、王都の民のために、自分たちが率先して炊き出しに参加するべきだ、と主張したのもカタリナだった。
優柔不断で、最終的にはいつも人に責任をなすりつけたがるいい加減な院長より、カタリナのほうが行動力があり、決断力もあり、それがジュリアとエミリアにとっては憧れの的だった。
若き修道院長、あるいは一国の王女を見るような目で、いつもカタリナを見ていた。実際カタリナの生家は、地方とはいえ大きな領地を持つ領主の家である。王家とも婚姻関係を結んだことのある、いわば名門だ。
貴族といっても下級、末流にすぎない家柄のジュリアとエミリアは、ここへ来た当初、意地の悪い先輩修道女たちからずいぶんと陰口を叩かれ、笑われたものだ。けれどそんな『貴族然とした』修道女たちは、カタリナが来たことによって黙らざるを得なかった。カタリナは『名門』という肩書きを持っており、そのため『田舎者』とは言われなかった。
──いや、そう言われはしたのだ。けれどカタリナは、それに面と向かって立ち向かったり、逆に相手をこきおろし、時には悪口雑言のかぎりをつくして罵倒することで、いつしか相手を黙らせてしまった。そんなカタリナを『あの子は少しおかしいのよ』と負け惜しみのように言った者もおり、何も言わずに距離だけを置いた者も多かったが、今まで『はみ出し者』とされていたジュリアやエミリアにとっては、カタリナは修道院の雰囲気を一変させてくれた救世主だった。
そんなふうにして、型破りなカタリナに心酔した修道女たちは寄り集まり、あっというまに派閥となった。その中心にいて、幹部のような扱いを受けているのがジュリアとエミリアだ。派閥は人数にして十人ほど。圧倒的とはいえないが、総勢五十数人の修道院の中ではけして少ない数ではない。院長といえど、その数を無視することはできない。
だがそのカタリナが、先日、この修道院では特別中の特別扱いを受けているクリステラの食事に毒を入れたのではないか──という疑いをかけられ、公衆の面前で拷問のような尋問を受けさせられた。地方領主の娘が、王都の公爵令嬢を殺そうとした、という話である。
けれどカタリナに、クリステラの悪口を多少は言っても、殺すほどの理由などありはしない。ただ、『修道女のくせに侍女を連れていて生意気だ』とか、『食事が特別扱いなのは許せない。院長がそんな特別を許すから、修道院の規則が緩むのだ』とか、誰でも思いつくような陰口をお茶菓子がわりにしていただけのことだ。
それだって、カタリナばかりが言うのではなく、取り巻きの修道女たちが、カタリナの機嫌を取るためにクリステラを悪く言っていた──というのが実際のところで、カタリナ自身はそれほどクリステラを意識しているようには見えなかった。何しろ、普段からほとんど顔を合わせることもないのだ。目にしないものは存在しないのと同じ、というのがカタリナの性格である。
そんなカタリナのことだから、あんな理不尽な尋問は持ち前のプライドの高さから笑い話にするくらいで、へこたれる姿など、たとえそうだったとしても絶対に見せるはずがないと思っていたのだが、その予想を裏切り、カタリナはあれ以来目に見えて口数が少なくなった。
──塞ぎ込んでいる、といったほうがいいのかもしれない。
そのくらい、前とは人が違ったようになってしまった。
それを見ているのが忍びなかったというのも、もちろん理由のひとつだ。けれど一番大きかったのは、やはりあの尋問以来、周囲の人間が見せた反応だった。

『まさか、シスター・カタリナがそんなことをするはずが……』
『でも、彼女、普段からやりたい放題だったじゃない』
『ええ、そうね。もしもシスター・クリステラのことを妬んだのだとしたら、理由は分かるわ。でもしょせん田舎貴族の娘のくせに、公爵家令嬢を妬むなんて……。エトヴィシュ公爵家という名前を信頼して、この修道院の門を叩いた方だって大勢いらっしゃるでしょうに』
『でも本人はやっていないと言っていたわ』
『ええ。あのときの様子は、嘘をついているようには思えなかった……』
『でも、取り巻きの誰かが、王都の怪しい店に出入りしていたんですって?』
『なんのお店だったの? 結局』
『それがよく分からないの。お茶か何からしいけど、薬も……売っているとか……?』
『まあ、薬も? それでは、疑われても仕方ないわね……』
『そもそも院長が、シスター・カタリナには甘すぎたのよ。シスター・クリステラは特別としても、シスター・カタリナはわたしたちと変わらない修道女のはずでしょう。なのに、取り巻きともども自由に外に出ることを許していたというんだから、呆れた話だわ』

──あちらこちらから、そんな噂話が聞こえてきた。
そうなると、カタリナの取り巻きもひとり、ふたりと姿を消していった。
さっそくのようにカタリナの悪口を言い、自分は関係ないとばかりの態度を取る者さえいた。その姿を見て腹が立ったが、数を頼みに好き放題してきたのは事実であり、いまや迫害される少数派となってしまった自分たちにはどうすることもできなかった。
──そんなときだった。塞ぎ込んでいるカタリナを残して部屋を出たところで、エミリアがジュリアにこう持ちかけたのは。

『ねえ。厨房に隠れて見張っていたら、ノコノコやってきた犯人を取り押さえられると思わない? ……わたし、犯人はまた食事に毒を混ぜるんじゃないかって、そんな気がするのよ。だから、やってみましょうよ。そうすればシスター・カタリナの無実が証明できて、彼女も気分が晴れると思うの』。


「そろそろ部屋に戻らない? わたし、足が痺れて」
屈みこんでいるジュリアが愚痴をこぼす。
けれど同じように屈みこんでいるエミリアは、断固として「駄目よ!」と言った。
「もう少し隠れていましょう。さっき、廊下に誰かの足音がしたのよ。はっきりと!」
「それは、修道院内を巡回してる憲兵の靴音よ……」
ジュリアはため息をつき、退屈そうに髪の毛先をいじりだした。
周囲は野菜を詰めた袋の山、足元の石床はごつごつしてひどく硬い。調理の机が頭上にあるが、うっかり立ち上がると頭をぶつけそうで怖い。そんな厨房の隅に狭苦しく身を縮めて隠れていても、いっこうに誰も入ってはこない。
当然だ。普段なら、調理の時間になるまで修道女の出入りはない。
「誰も来ないと思うわよ? シスター・エミリア……。もう諦めましょうよ」
「そんなこと言って、あなた、シスター・カタリナがあのままでいいと思うの?」
エミリアが天使のようにくるくるとした巻き毛を頬にまとわりつかせながら、その柔らかな雰囲気に似合わぬ厳しい表情を作ってみせる。ジュリアはそばかす顔をかすかにしかめて、「そうは思ってないけど」と苦々しく呟いた。
「でも、なんだか無駄な気がするんだもの」
「無駄って、何が?」
「だって、狙われているのはシスター・クリステラなのよ? そうでしょ?」
ジュリアは疲れたように野菜の袋にもたれ、毛先を見つめてそれをいじりながら言った。「彼女の食事は、この厨房では作ってないのよ」
「そんなこと分かってるわ」
エミリアは気分を害したように言った。
「ええ、たしかにあなたの言うとおり、シスター・クリステラの食事はここでは作っていない。でも、狙われるのが彼女だけとは限らないじゃない」
「まさか! 他に誰が狙われるっていうの?」
ジュリアは呆れたように言った。エミリアは巻き毛の先をつまんで、それを口に軽く加えた。そうね、と呟いた唇に絹糸のような細い髪が光って残る。
「たとえば、シスター・マルグレーテとか。彼女も美人だし、伯爵家令嬢ではないの」
「それを言うなら、シスター・カレンじゃない? 彼女、大金持ちのウェルガー家当主の姪なのよ。身代金目当てなら彼女以上の人はいないわ。……だけど、それを毒殺してどうなるの?」
「身代金が目当てなんじゃないわ。あくまで、殺すつもりでいるのよ。犯人は!」
エミリアはきっぱりと言った。
なんの根拠があるのか、いかにも自信ありげな態度にジュリアも黙ってしまう。
「この修道院で、恐ろしい連続殺人事件が起ころうとしているのよ!」
エミリアの気迫に、ジュリアは「れ、連続殺人?」と訊き返すのが精一杯だった。
「そう──」
エミリアは何かを思い出すように目を閉じる。
「最初に狙われたのが一番美人で、一番血筋のいいシスター・クリステラ。それなら、次は二番目に美人のシスター・マルグレーテか、二番目に血筋のいいシスター・ルイーゼ、あるいはその両方だと思うわ。わたしの勘がそう告げているの」
エミリアはそこまで言うと、かなり頭を使った、というように「ふう」とため息をついた。
「その理屈だと、美人で、血筋のいい人から順番に殺されていくわけね」
ジュリアはどことなく冷ややかな口調で言い、エミリアを眺めた。
エミリアは「そうよ」と頷く。
エミリアはエミリアでなかなかの美人、美少女であるのだが、いかんせん思考回路が普通の人とは違っていて、『美人』というよりは『変人』というふうに見られやすい。
一方のジュリアはお世辞にも美人とは言えず、自分でもその自覚がある。
黙っていればお花のように見えるエミリアは、ジュリアから見ると時々妬ましく、腹立たしくなる存在であった。天から天使のようなかわいらしい顔立ちを与えられているのに、性格は明らかに『変』。いつも突拍子もないことを思いついたり、それを実行したりする。それに巻き込まれ、とばっちりを食らうのはいつもジュリアだった。そのせいで、なんだかいろいろ腹立たしいのだ。
「それなら、わたしは狙われる心配はなさそうね。顔も血筋も並だもの」
ジュリアが自嘲的に言うと、エミリアは軽い調子で「そうね」と頷いた。
「でも、わたしは狙われるかもしれないわ。だから、その前に犯人を捕まえないと」
「………」
ジュリアは馬鹿らしい、というようにこめかみを押さえた。
「いったいなんのために、美人や血筋のいい人たちを殺していくの?」
訊きたくないが一応、というような態度で質問すると、エミリアは、
「それはたぶん、誰かの『妬み』でしょうね」
と言った。
「妬み?」
「ええ、そう。顔もよくなくて、血筋もよくない。そんな人が妬んでいるのよ」
そう言いながらエミリアはジュリアを「じいっ」と見つめた。
「どうしてそこでわたしを見るのかしら。シスター・エミリア」
不愉快そうにジュリアが指摘する。
「え?」
エミリアは軽く眉をひそめた。
「話すときに、人の目を見るのは礼儀として当然じゃない?」
「それは分かるけど。なんだか不愉快だったの、あなたの視線が」
「視線を不愉快と言われても、申し訳ないけれど、わたしにはどうしようもないわ。生まれつきこんな目なんだもの──あっ、ちょっと黙って!」
エミリアは息を呑んで身を乗り出し、広げた片手でジュリアの肩をおさえた。
今喋っていたのはエミリアで、「黙れ」と言われる筋合いはなかったのだが、いつもこんな調子なので諦めてジュリアは何も言わなかった。そのあいだにエミリアは何かに耳をすませていた。
「……足音よ。近づいてきたわ」
「また憲兵じゃないの?」
「いいえ、今度は違うわ」
エミリアが目をらんらんと輝かせてジュリアを見る。ジュリアもしぶしぶ身を起こし、耳をすませた。