アメデオ・アマデイ(Amedeo Amadei (1866-1935) ;It.)の「海の組曲」はマンドリンオリジナル曲としては極めて有名で、KMCがコロムビアに録音した際のタイトルにもなっています(COCG-11797)。
構成曲には神話の神や精霊が登場しますが、(日本に入ってきた時の日本語訳表記があったはずですが)この表記は団体によってまちまちです。
KMC Historyとしては、何回も演奏されているこの曲の表記を統一する必要があり、改めてより一般的な表記を追求することにしました。
イタリア語で「海の」は"marin|o(a)"のようです。"marinaresc|o(a)"は「[船員|船乗り|水夫|水兵|海兵]-[風の|らしい]」という意味なので、ストレートに「『海の』組曲」という感じではないようです。
ただしアマデイが関連した軍というと陸軍らしいので、少なくとも水兵、海兵の、ということではなく、船乗りが祈る対象であるところの神/精霊を題材にした、というところなのでしょう。
三田マンドリンクラブ(KMC三田会)の演奏会では「舟人の組曲」と表記している場合があります。
・・・とはいえ、他にバリエーションを見たこともなく、「海の組曲」で異論なしというところです(ナイアードは淡水らしいので海かというと微妙ですが・・・)。
La Serenata、La Danza、Il Canto、La Fugaはそのままなので省略。「セレナード」、「歌」については表記原則に従います。
delle = di + le{定冠女性複数}
dei = di + i{定冠男性複数}
(ラテン語等他言語でなく)イタリア語だとすると、4曲共に複数形である。
[it]単数形 | [it]複数形 | [ja]単数形 | [ja]複数形 | 説明 |
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Naiade | Naiadi | ナイアード、ナイアス(古典読み) | ナイアデス | ギリシャ神話の水(淡水、河川泉)のニンフ |
Ondina | Ondine | オンディーヌ、ウンディーネ | - | 四大精霊(火水風地)の水の精霊 |
Sirena | Sirene | セイレーン | セイレネス | ギリシャ神話の海の怪物 |
Tritone | Tritoni | トリトン | - | ギリシャ神話の海の神で、ポセイドンの息子 |
Naiadiについては読みそのままの「ナイアーディ」や「ナイアーゼ」「ナイアード」という記述がみられます。 この中で神・精霊界での呼称は「ナイアード(古典読みはナイアス)」のようです。複数形として「ナイアデス」も多く使用されています。
Ondineについては「オンディーヌ」か「ウンディーネ」で、どちらも日本語で使用されています。 これはドイツ語やフランス語の異なる文学や戯曲が別々に日本に入ってきた為と思われます。 ここでは、イタリア語の発音に近い「オンディーヌ」を採用しました。
Sireneについては圧倒的に「シレーネ」表記が多いです。 これはマンドリン界だけの現象のようなので、輸入当初の表記だったのでしょう。 しかしこの精霊について(概念として)「シレーネ」と発音する言語はないようです(一番近いのはドイツ語の「ジレーネ」。イタリア語の複数形は勿論「シレーネ」と発音しますが、他の楽章とのバランスから単数形を用いることにしました)。 日本での認知度としてはテレビゲーム等の影響か圧倒的に「セイレーン」だと思われます。
Toritoniについては「トリトーニ」が多く、最近になって「トリトン」表記が見られます。 日本での認知度としては「トリトン」だと思われます。
全て複数形なので、日本語も複数形のものを使用したいのですが、ナイアデスとセイレネスしか日本語になっていない上に、セイレネスの認知度が低いことから、この方式はやめました。 そこで単数形に「達」をつけるのがベストのように思われたのですが、「ナイアード達」「オンディーヌ達」「セイレーン達」「トリトン達」では流石にしつこいので、「達」をつけるのはやめました。 名詞の単数/複数変化において単語の語尾が直接変化する言語と、そうでない日本語との違いは如何ともし難いので、 もう「日本語では単数/複数の差が厳密でない」「概念を表す時は単数でよい」と割り切りました。
ところで・・・ナイアード、オンディーヌ(ウンディーネ)、セイレーンは個体名ではないので複数形もあり得るのですが、 トリトンは個体名ですので、複数形はおかしいのではないかと思っています。