「私の夢はいつでもどこでも、地球のかたすみで彼らにまた会うことだ」。ある日本人演劇評論家は昨年、梁正雄(ヤン・ヂョンウン)演出家がひきいた劇団「ヨヘンヂャ(旅行者)」の日本公演を見てこう語った。
昨年、世界的な実験演劇祭であるエジプト「カイロ国際実験演劇祭」で人間の4つの祭儀を舞台化したイメージ劇『縁―カルマ』で大賞を受賞し、国内外ともに賞賛を受けている演出家のヤン・ジョンウン(35)氏。来る3月のLGアートセンター「今日の若い演劇人」に招請され、すでに舞台練習の生みの苦しみを味わっているヤン・ジョンウン氏と27日、LGアートセンターで会った。
ヤン・ジョンウン氏と創団7年めを迎える劇団ヨヘンヂャ(旅行者)は彼の言う通り、この1〜2年のあいだに「ぱっと盛り上がった」。「恵化洞1番地」3期演出家の同人として活動し、2002年「密陽夏公演芸術祭」での大賞、2003年の「今年の演劇ベスト7(演劇協会)」などを受賞して認められはじめた。
シェイクスピア劇を東洋的なイメージと体の演劇に変容させるスタイリストのヤン氏。彼の舞台は強烈な色を帯びており、その光に観客を盲目にしない楽しさがある。文化人である両親の膝下で自身も文学を専攻したヤン氏だが、彼の舞台美学はむしろ非言語的なものから出てくる。
「言語は演劇の生命だと思います。しかし言語は意味であると同時に音でもイメージでもあります。私が演劇を行う理由はコミュニケーションのためです。体とイメージが描き出すミジャンセン、そしてスケールに関心があります」。そこで劇団ヨヘンヂャは演劇劇団であるにもかかわらず常任振付家を置いて身体訓練を行わせ、楽器と歌のレッスンを受ける。世界的な名作によって、「広大な」世界舞台の観客に容易に近づくヨヘンヂャだけのカラーを探すためだ。
今年だけでも「ラテンアメリカフェスティバル」とポーランドの「マルタ・フェスティバル・ポズナン」「ボゴタ・イベロアメリカ国際演劇祭」など、招待された海外舞台を一つ二つと数えるヤン氏の指は5本では足りない。しかし3月のLGアートセンター公演のために当初予定されていた世界的な公演芸術祭である南米の「ラティノ・アメリカーノ・フェスティバル」参加を取り消したというヤンさんにとって海外市場開拓と同じほど重要なのは韓国の観客だ。
韓国の観客たちほど「劇団ヨヘンヂャ」の活動に希望と支持を与えるファンがあるだろうか。同時に、韓国的情緒を基盤にしながらも韓国伝統様式で規定できないヨヘンヂャの姿に「日本色だ」「国籍不明だ」と警戒して乗り出すのもわが国の観客たちだ。
これに対してヤン氏は「モダンさを受け入れながら東洋的なもの、韓国的なものを探している」とし、「第3世界音楽であれ日本式舞踊であれ、私の中で国境を越えた文化交流は重要だ。チャンポン式ではなく優秀な想像力を慕い、私のやり方で溶かすのをタブー視する必要があるだろうか」と問いかける。
1995年に大学を卒業後、多国籍劇団「ラセンカン(らせん館?)」の団員としてスペイン・日本・インドの国境を行き来しながらヤン氏が感じたのは境界を引くことの無意味さだった。さまざまな世界祭の常連客になること、ゆえにヨヘンヂャだけが持つことができるゆらぎの中に自分を投げ出して得られるインスピレーションと自省こそが芸術家の資産だと彼は言う。
「海外市場がどれほど広いのかわかりません。いまヨヘンヂャは素足の開拓者ですが、これが後輩にとっては支援の肥やしになると信じています。30人あまりの団員を従えた若い「家長」、演出家のヤン氏は話し続ける。「お腹いっぱいになりたい。汗を流しただけ対価を得て…。」