12日午後、東京・新宿の新国立劇場小劇場舞台では、アリエル・ドーフマンの新作『線の向こう側(The Other Side)』がソン・ヂンチェク劇団美醜(ミチュウ)代表の演出で世界初演された。『線の向こう側』は日本の新国立劇場が「2005年シーズン、女と男の風景」をテーマに『ザ・ゲーム The Game』『てのひらのこびと』『静かな叫び』などと共に4部作として企画した作品だ。戦争中のコンスタンツァとトミスという仮想のふたつの国の国境地帯で、屍をひろいあつめて人生を築いていきながら15年前に家を出た息子を待つ老夫婦の生活を描いた。
日本の演劇界では珍しく戦争をテーマにしたこの日の公演で、老夫婦のアトム役とレヴァーナ役の品川徹(68)と岸田今日子(73)、息子と推測される国境警備員役の千葉哲也(41)は2時間のあいだ真剣な演技で客席301席を埋めた中・壮年層の観客に戦争の悲劇を伝えようと努力した。
この日、レヴァーナ役の岸田今日子は日本の代表的な戯曲賞である岸田戯曲賞の制定者である岸田國士の娘で、現代日本の演劇界を代表する最高の俳優らしく演技と表現力が非常に巧みで卓越した。特に自分の息子ジョセフかもしれない国境警備員の死体を抱きしめて不思議な表情で子守唄を歌うが、とつぜん自分の息子ではないと否定する姿は固いが、子どもの死の前には限らず余った母性愛の典型を適切に盛り込んだ。
演劇評論家の石沢修二(もとベセト演劇祭事務総長)は「子供を持つ世界のすべての母親に岸田今日子の演技を見せたい」と賞賛を惜しまなかった。
国境警備隊員役の千葉哲也もまた「若い年齢らしくない、非常に柔軟な俳優」だという演出家ソン・ヂンチェク氏の評価にふさわしく、先輩俳優たちを相手に印象的な演技力を誇り、日本演劇界が期待する実力派俳優であることを立証した。しかし父親役の品川徹は公演を通して硬い演技とセリフと単調な動線で、表側には精力的だが自分のせいで息子が家を出ることになったという罪悪感にとらわれた父親のキャラクターをうまく消化できなかったという指摘を受けた。
一方、この日の公演では最後の場面で壁が崩れ、老夫婦がこれまでに埋葬した5000人余りの名も無い兵士たちの墓地が現れ、戦争の惨状を著しく浮き彫りにしたソン・ヂンチェク氏の演出が演劇評論家たちのあいだで話題を集めた。公演後のレセプションで作家のドーフマンは「シナリオにもない優れた感覚で、驚くべき感動を与えた」と語った。28日まで公演される『線の向こう側』は今秋、英国の世界的な演出家ピーター・ホールによって英国で上演され、来年初めには韓国の舞台に立つ予定だ。