去る2002年韓・日ワールドカップが盛んに開かれていたときに初演された演劇『その河をこえて、五月』がソウル市瑞草洞芸術の殿堂「土月劇場」の舞台に再び上がった。1日から3日までたった3日間公演される演劇は「韓日友情年」を迎え、芸術の殿堂と日本の新国立劇場が共同で準備したもの。2002年の公演当時、韓国演劇評論家協会が選定した「今年の演劇ベスト3」に選ばれ、翌年には日本の代表的演劇賞の一つである「朝日新聞演劇大賞」を受賞した作品でもある。独島問題と歴史教科書問題などで「韓日友情年」はすでに色が褪せてしまったが、両国国民の現在の生を赤裸々に見せる演劇は、両国民が同じ時代を生きる隣人であることを如実に証明する。
舞台背景は春を迎えたソウルの漢江堤。韓国語学堂の教師キム・ムンホは、韓国語を学ぶ日本人学生らを連れて花見に乗り出した。多様な年齢の日本人学生らは職業もまちまちだ。夫の転勤に付き添って韓国に来た主婦、日本で学校生活に適応できずに登校拒否をしたがソウルまで来た学生、老人用品を売る会社のサラリーマン、水泳選手である在日韓僑胞など。一方、キム・ムンホの母親と弟夫婦も同じ場所に出かけてきて、彼らと合流することになる。また、在日僑胞の韓国人恋人と新婚旅行の途中で迷子になった日本人観光客も登場する。
二つの茣蓙に分かれて腰を下ろした人々は、自然に互いに対話を交わすことになって些細な言い争いも繰り広げ、互いに慰めたり、それぞれの内心を打ち明けたりする。彼らの対話を通じて韓・日両国の歴史関係、在日韓国人問題、両国間の慣習の違いなどが明らかにされる。しかし何よりも各自の人生が赤裸々に明らかにされつつ、「道を失った」現代人の自画像がはっきりと浮上する。両国民の慣習的な差よりは、今日を生きる同時代人として互いに似た悩みと問題を持っていることを示すわけだ。家族間の紐帯がゆるんでいく現実、整理解雇など職場の不安、移民問題、空港離婚、フリーター(一定の職業なしで生きていく日本の若者)現象、嫁姑の葛藤など、彼らが打ち明ける悩みはまさに私たちの問題だ。彼らはきちんと言葉が通じない状況でも、互いにコミュニケーションをとるために持てる力を尽くす。 韓国俳優は韓国語で、日本俳優は日本語のセリフで進行する演劇は「差異の中の同一」を確認しつつ、和解のハッピーエンドで幕を閉じる。
演劇『その河をこえて、五月』の醍醐味は、あまりにも自然な日常事を見せてくれるということにある。実際に漢江の堤に遊びに来た彼らの姿をすぐそばで見ているようだ。それでも2時間30分の公演が終われば、いつのまにか観客たちは韓・日両国が隣人であることを絶感することになる。政治の場では表面的に問題を縫合しても、互いにわだかまりを払い落とせないのが現実である反面、舞台では互いに攻撃をしつつ問題を指摘して争ってもいつの間にか相手の痛みまで抱きしめる「真の和解」の過程を見せる。韓国側は元老俳優白星姫(ペク・ソンヒ)氏をはじめ李南煕(イ・ナムヒ)、徐鉉普iソ・ヒョンチョル)、鄭在恩(チョン・ヂェウン)各氏と在日演劇人である金泰希(キム・テヒ)氏が舞台に立つ。日本側は三田和代をはじめ佐藤誓、小須田康人、谷川清美、島田曜蔵、蟹江一平などが出演する。