≪Theatre Reviews
「静かな日本演劇、 静かな突風」
チョン・サンヨン記者/ハンギョレ新聞(2008/1/3)

小説に引き続き演劇でも「日流」が荒々しく吹いている。国内の演劇舞台に上がる外国作品といえば常に英・米圏に集中して来たが、最近何年かのあいだ日本演劇が韓国版演劇として新しい流れとなった。新しい作品に喉が渇く観客に日本演劇が新しい感覚で近づきつつ、われわれの演劇として新鮮な刺激を与えているのだ。

日本演劇ブームは2000年代中盤に始まって、2007年まで倦まず弛まず持続しており、年を越しても続く見込みだ。去年、国内の舞台に上がった日本演劇は10編ぐらいにのぼる。松田正隆の『海と日傘』(演出:宋宣昊)を含めて井上ひさしの『月は美しくもあれ』、在日韓国人作家柳美里の『魚の祝祭』、奥田秀郎原作の『ドクター伊良部』 などが公演された。カンヌ映画祭で受賞した日本の映画監督今村昌平の『ええじゃないか』は在日韓国人演出家金守珍の演出によって演劇として仕立てられ、去年の上半期に密陽演劇村とアルコ芸術劇場で公演された。

年末年始にも在日韓国人劇作家鄭義信『冬のひまわり』(イ・サンヂク演出)が国立劇場の特別企画公演として6日まで、国立劇場ピョルオルム劇場にて公演中であり、この作品に引き続き、日本の代表的劇作家兼演出家である平田オリザの『カガクするココロ』(写真) 3部作シリーズの完結編『バルカン動物園』(ソン・ギウン演出)が10日から大学路アルコ芸術劇場舞台に上がり、日本演劇が2008年演劇舞台の開始を告げている。引き続き5月にも平田オリザの『東京ノート』が『ソウルノート』として脚色されて公演される。

日本演劇が最近わが国の劇界で脚光を浴びていることは、現代人の日常と心理を捕捉して繊細に描く日本演劇特有の特徴からと見られている。特に日本現代演劇の主な流れである「静かな演劇」が国内の観客と気脈を通じている。

演劇評論家ノ・イヂョン氏は「さいきん何年かのあいだ『海と日傘』『ソウルノート』『 カガクするココロ』など、90年代日本劇界で新しい傾向でとして浮上した〈静かな演劇〉が韓国でよく公演されている」と語る。彼は「〈静かな演劇〉に代表される日本演劇は、こまごましていて穏かな日常の問題を細かく描き出す能力が優れている」とし、「韓国演劇では容易に見出すことができない知的で敍情的な魅力が国内演出家と観客の気を引いていると思える」と分析した。

このように日常的で個人的な感性を表現する日本演劇が勢いを帯びることは、この間にわれわれの社会が関心を持って来た巨大言説が衰退したことも主な理由として数えられる。

評論家金明和(キム・ミョンファ)さんは「21世紀に入って民主化や人権問題など巨大言説が消えつつ、日常に関心が集まる傾向とかみ合って、現代人の生を纎細に表現する敍情的な日本演劇が共感を呼んでいる”と説明した。彼女はまた「最近、何年かのあいだ活発に進行してきた韓・日劇界の交流だけではなく、韓流と連関して高潮している日本文化に対する関心も反映された」と付け加えた。演出家ソン・ギウンも「90年代に現代社会の疏外された群像の孤独を執拗に暴いて来た村上春樹の小説が流行って、最近は日本映画が国内で若い観客たちに人気を呼んでいる現象とも脈を同じくする」と語った。

現在公演中の『冬のひまわり』と公演を控えた『カガクするココロ』は、それぞれ現代人のアイデンティティに対する疑問を投げる作品だ。『海と日傘』の場合も、日本の小さな村を背景として日常的な生をリアルに描いて大きな呼応を得て再公演まで至った。これらの演劇作品は複雑な演劇的装置や誇張なしに俳優の身振りとせりふだけで日常と悩みを自然に描き、現実とそっくりに場面を演出するのが特徴だ。したがって観客は極めて静かで日常的な流れが進行する空間で、俳優と一緒に呼吸して俳優の目で生を眺めて共感するようになる。

『ソウルノート』(原作『東京ノート』)を春に舞台に上げる予定の劇団パークの朴匡正代表は、「日本演劇は作家の主題を観客に一方的に伝達する方式から脱して、現代社会の多様な現象をリアルで細密に描いて観客たちの共感を誘い出すことが特徴」と評した。演出のソン・ギウンは「感情を節制しながら細密な観察力で観客の知性と感性を同時に刺激する日本演劇の特徴が、現代人の感性と触れ合って、日本演劇の勢いは今後とも続くようだ」と見込んでいる。