――6枚目
「それで、どうしてここへ戻ってきたんだ?」
……その言われ方はもっともだと思う。俺は黙っていた、どうせこういう時には渡辺に任せておいた方がいいのを、俺はいい加減理解していた。やる気の問題ではない、適性の問題だ。
「いや、行く場所ないしさ。よく考えたら食い物もないし」
さらりと言ってみせるところが、こいつのすごいところだと思う。確かに状況はその通りで、俺達にしてみればそれは最良の選択だ。しかし、それは『道』には関係のないことであるのも、また事実だ。……つまるところ「勝手な言い分」ってやつだ。
「……まあいい。それで、その様子だと他には誰も会えていないようだな」
悪気がある訳でも嫌味でもない。かといって、成果はどうだった、と期待を込めて訊くのでもない。ただ単に何の感情がある訳でもなく確認してみせただけだろう。
「あのさー、ヒントとかない訳?あいつだって、あんたのこと教えてくれたぜ?」
渡辺が『迷』のことを持ち出すと何故か『道』はほんの少しだけ表情を変えた。が、俺が何か言う前に、一瞬でその表情は消え、どこか思案げに目を遣る。
「そうだな……『美』に会うのがいいいいかも知れない。あれは顔が広い」
「メイ?どんな奴?」
「――――美しくて、聡明な人だよ」
へぇー?何となく、こいつがこんなことを言うのは意外だ。どこか懐かしむような想いを馳せるような表情。
「それ女だろ」
渡辺が揶揄るでもなく訊く。俺もそう思った、思ったけど……
「あ、違う。渡辺、ほら、あいつが言ってたろ?この世界には、男とか女とかっていうのないって」
「ああ、そういや、そんなこと言ってたっけ」
こそっと言った俺に、渡辺が思い出したように適当な相槌を打つ。
「貴方が他人の噂話なんて珍しいわね、『道』」
「『美』……いや、麗麗か」
「久し振りね」
突然現れたのは、すげー美人だった。『迷』や『道』もだけれど、目の前の相手は群を抜いている。……女性だ、というのを差し引いても、だ。
「すっごい美女だな……」
「女はいないんじゃなかったのか?」
思わず口にした俺に、皮肉るように渡辺が返した。そうだった。でも、どうやらこの世界にも、少なくとも外見的な男女みたいなものは存在するらしい。本当に性別なのか、単に外見上の個性に過ぎないのかはともかくとして。
「この子達が?」
「知っていて来たのか」
「ええ。『迷』に聞いてね」
どうやら俺達のことを話しているようだ。『迷』の奴が根回し(?)して協力してくれそうな人に声を掛けてくれたのだとしたら、思ってたより随分と親切だ。
「『道』紹介してよ」
渡辺が少し離れて話している二人に聞こえるよう声を掛けると、件の美女が俺達を振り返った。
「……ええと、麗麗?」
紹介しろと言っておきながら、渡辺は自分で話し掛けた。疑問形で名を呼ぶと、麗麗は頷くようにして綺麗に微笑んでみせた。
「さっき、ちらっと『美』って呼んだのは?」
これは『道』にだ。そういえば、彼女が現れた時、『道』はそう呼んでから言い直した気もする。『道』がそれに答える前に、麗麗がすっと前に出た。
「『美』は、そうね、双子みたいなものよ」
そう言ってにっこりと浮かべた笑顔は、どこか意味深にも見えるものだった。