2000.12.16
県南ブロック区長制度研究会中間報告
( 作成:永瀬英一)
県南ブロックにおいて研究を続けてきた区長制度について次の通り報告する。
なお,本報告は,7月の調査終了後,諸般の事情で研究会メンバーによる調査結果の検討を行うための時間がとれず,やむを得ず永瀬の責任において発表するものであることを付記する。
1. 経過
1999年夏,霞ヶ浦文化体育会館で,市民行政講座「全国市民オンブズマン神奈川大会」の報告会が開かれたが,そのあとの懇談会で区長制度問題についての発言がきっかけとなり,とりあえず発言者の属する県南ブロックがこれを引き取り研究を発足させることとなった。
これはその後「市民オンブズマンいばらき2000年度活動方針」の中において「地域政治と密接に絡む区長制度の研究を通して政治の是正と活性化を狙う」区長制度研究会の活動として認められた。
県南ブロックにおいては,披田幹事を座長として度々の幹事会,会員懇談会を通じて共通の理解を育んできた。一連の経過の中では,「オンブズマン全国大会,分科会に中間報告をしたらどうか」などの意見も出たが,座長提案で,まずは県南ブロック内区長制度の実態調査から手を着けることとなり,調査済みの8市町村についてはさらに補充調査を行うほか,未着手の16市町村についても研究会メンバーが中心となり,会員有志の協力も得て,直接現地に出向いての資料収集,聞き取り調査を行うことになった。
調査分担は次の通りである。
披田・尾崎チーム 利根町,河内町,新利根町,伊奈町,谷和原村
稲葉・石川チーム 玉里村,石岡市,八郷町,千代田町,新治村,霞ヶ浦町
永瀬・小池チーム 美浦村,江戸崎町,東町,桜川村,茎崎町
ほかに,茎崎町では会員である宮本次郎町議の積極的な協力が得られるなどメンバー以外の方々からも種々の協力があったことを付記して謝意を表したい。
調査には6月下旬から7月下旬までの約1ヶ月間を要したが,天候不順にもかかわらず関係者の努力により別紙1の成果となった。
なお,調査にあたって入手した各市町村の原資料等は永瀬ほか主要メンバーが保管している。
2. 調査結果の分析
別紙1のとおり県南ブロック(一部,県西を含む)24市町村を対象とした調査結果から以下に述べるように,行政と住民との関わり方の現状を読みとることが出来る。また,調査各市町村の世帯あたり区長報酬等の金額は別紙2のとおりである。
* 一部には行政が住民の自治組織との間に,行政事務の一部を委託する新しい動きも見られるが,他はおしなべて行政が自治組織を行政の末端組織ととらえている傾向が顕著
* 住民側も,自治組織とはいうものの、さほど深い思慮もなく,行政の指示,指導に唯々諾々と従っている図式
* 自治組織それ自体が行政の便宜上定めたに過ぎない「行政区」と完全に重なり合い,自治組織の代表がそのまま行政上の役職である「区長(大半は非常勤特別職)」として,何のとまどいもなく委嘱を受けている事実
* ごく一部を除き,行政からは「区長」に対し「報酬」という属人的な給付がなされ,一方でこのことが住民にはタブーとして秘匿されたまま(まれな例と解釈したいが―),一般住民がほとんどボランティアの形で広報紙の配布など行政事務に従事させられている事実,また,そのことが区長の既得権益と化し,適正規模の自治組織の成立を妨げ,組織の固定化,肥大化や区長の交替を妨げている事象を招いていること
* そのような区長によって構成される区長会が行政に大きな発言権を持ち,反面集票組織として機能し,もしくは機能しうる側面をもっていること
以上,みてきたように区長制度が内包する弊害を実例を挙げて指摘する声は枚挙にいとまがないが,ここではそれをいちいち掲げる余裕がない。制度全般を含め,詳しくは下記の文献を参照していただきたい。
今後市民オンブズマンいばらきが全県的な試みとして同様な調査を行うことを強く希望して報告を終える。
参考文献:
単行本
町内会の研究 1989年発行 岩崎信彦ほか編 お茶の水書房
地域自治会の研究 1996年発行 鳥越皓之著 ミネルヴァ書房
地域自治の住民組織論 1998年発行 山崎丈夫著 自治体研究社
あなたの「町内会」総点検 1994年発行 佐藤文明著 緑風出版
住民自治で未来をひらく 1995年発行 住民自治の拡大をめざす
ネットワーク編 緑風出版 手づくりのまち 1985年発行 田中和夫著 総合労働研究所
その他メディア
多元的地域社会における多様なセクター間の協働
―コミュニティーの再生をめざして― 平成9年度岐阜県研究報告
( From: http://pref.gifu.jp/s21401/sagaru/ )
1998.9.9〜1998.11.8 朝日新聞第3社会面
「どうするあなたなら…」のコラムに5回にわたり掲載
追記:現在までに県北ブロック斎藤正弘幹事(日立市)から「進め方の考察」と題するご意見が寄せられているほか,大津勉幹事(ひたちなか市)からも,「区長制度について」と題する詳細な参考資料を附したご意見(12.4.16)や,今回の調査要領に沿った内容の報告をいただいているが,紙数の関係もあり,討議の課程で研究会メンバーが発表したレポート等とともに残念ながら割愛した。
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